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【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」⑥ ~<番外編>北海道とロシア・後編~

【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」⑥ ~<番外編>北海道とロシア・後編~

えぞ財団 2022年4月6日

北海道経済入門とは?


この連載では、小樽商科大学3年生の神門崇晶(カンドタカアキ)が北海道経済についての「今さら聞けない」 という部分を探っていきます。例えば、北海道の経済の大きさはどれくらいなのか?それを構成する北海道の主要産業は何か?など北海道経済の基本的な部分を理解していくことをインフォグラフィックを通して試みるプロジェクトです。


導入


前回は、地政学について基本的なことと、日露戦争までの北海道・日本とロシアの関係性を見ました。

【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」⑤ ~<番外編>地政学入門 / 北海道とロシア・前編~

今回は、日露戦争以後の歴史、そしてこの前のえぞトーク(​​富山さん・齋藤さん・木下さん・成田さん)で触れられた話題を交えて、より経済的な観点からの北海道・日本とロシアの関係性を見ていこうと思います。

本日のインフォグラフィック


第1次世界大戦時の北海道とロシア


1904-1905年の日露戦争でロシア帝国は負けたため、アジアにおける南下政策を諦めることになりました。この時は敵対関係にあったロシアと日本でしたが、1914年に勃発した第1次世界大戦では日英同盟を理由に、日本は三国協商(イギリス・フランス・ロシア)側につくことになります。
当時の「世界」はヨーロッパでしたがそこで戦争が行われて、日本は戦地にならなかったため、ヨーロッパに代わり日本が戦争用物資や食糧の一大供給地となりました。これにより好景気になります。北海道も例外ではなく、この時期に資本主義経済が確立し始めます。
この時代の経済状況を「新札幌市史」から見てみましょう。


明治43(1910)年から大正7(1918)年までの札幌の産業別生産価額を見ると、産業構造が商業から工業中心へと移行していることがわかります。ただ、工業とはいっても近代的な重化学工業ではなく、中小零細が中心の軽工業が中心でした。当時の北海道の経済の中心地は札幌・函館・小樽の3地域でしたが、2都市とは異なり「工業都市・札幌」という性格が強かったことが次の資料からも確認できます。


しかし、次第に札幌の工業生産額が全道に占める比率は低下していきます。これは、室蘭などの都市で工業化が進んだことにより、工業都市の分散化が進んだ結果です。対して、札幌の会社資本金総額の比率が増大していき、小樽のシェアはどんどん低下していきます。大正2(1913)年には札幌が北海道で2番目の経済都市に成長します。これは、次の資料のように物価と賃金にも影響します。


これは、北海道が物資の供給地であったために需要量に国内供給量が追いつかなかったということも考えられますが、この時期に急速に経済が成長していたことがわかります。
また、「新函館市史」を見ると第1次世界大戦時の北海道から国外への移出入量の増大がよく分かります。


全道単位では、日露戦争が終わった明治38(1905)年から、第1次世界大戦が終わって2年後の大正10(1921)年までに、移出入量は約5.6倍に増えています。ここでロシアとの関係性について述べると、ポーツマス条約によって日本人もロシア人と同様に、ロシア領沿岸で漁業に従事する権利を得たことにより、その策源地である函館が発展する基礎が築かれました。
また、それまで函館と小樽が2大港湾都市でしたが、日本製鋼所の設立や王子製紙苫小牧工場の建設に伴って室蘭の比重が高まってきています。

このように、日露戦争と第1次世界大戦を通じて、北海道経済は大いに成長し、本州に遅れて資本主義が確立するようになります。戦争と経済の関連性の大きさはこのような事実からも分かります。
ちなみに、北海道初の百貨店である、かつては札幌駅南口北4条西3丁目にあった五番館(当時・五番館興農園)は、元は種子や牧草の販売を行う札幌興農園という企業が運営していました。日露戦争での特需で資金力が大きくなり、創業者である小川二郎は五番館を開業し、後に三井物産札幌支店長の小田良治へと受け継がれ、北海道における百貨店・デパート業界のトップランナーとして歩みを進めていくことになります。
(出典:STVラジオ編『北海道150年記念 ほっかいどう百年物語 上巻』、「五番館物語」より、中西出版、2018年)


また、第1次世界大戦時には、世界的に豆類の供給量が落ち込んだために、十勝のインゲン豆とエンドウなどが世界市場に進出することになりました。「豆成金」「澱粉成金」が出現したり、多くの工場が進出、無限責任帯広信用組合(現・帯広信用金庫)が開設されたりと、金融業も活発化しました。このように十勝の農村の経済力はこの時期に強化されました。

そして、大戦中の大正6(1917)年、ロシア革命が起こりロシア帝国はロシア共和国になり、5年後にはソビエト連邦になりました。ここに、戦後の冷戦まで継続する社会主義陣営 vs 資本主義陣営の構図が出来上がります。

第2次世界大戦後の北海道とロシア


第1次世界大戦後の日本では戦後景気に沸き立ち、数多くの成金が出現しましたが、ヨーロッパでの供給量が戻ってくると景気が悪化してきます。そこに、大正12(1923)年の関東大震災、昭和2(1927)年の金融恐慌、昭和4年の世界恐慌がくることで、世界的に不況に陥ることになりました。
菊池(1998)によると、アメリカにおいては1933年のピーク時には失業率が24.9%にまで上るほどの不況に陥ります。
(出典:菊池英博「金融大恐慌と金融システム」、文京女子大学 『経常論集』 第 8 巻第 1 号、1998年)

菊池(1998)「金融大恐慌と金融システム」.pdf
https://note.com/api/v2/attachments/download/578c637c70930b17bc7e6a4ed6e82e73

これによって、各国政府は植民地との貿易を第一優先にして自国の経済を守るブロック経済に移行し始めます。この際、植民地を多くもたなかったドイツ・日本は、領土拡大に乗り出します。ドイツは前回の記事で触れた「回転軸」と呼ばれた東ヨーロッパに、日本は満州へと国際的な批判を浴びながら戦力を投下していきます。
この拡大路線に伴って、北海道の存在意義も変わってきます。
前回の記事でも述べたように、北海道には「士族授産・北方警備」が求められていました。これは、内国植民地的な性格が強いことの現れであり、外地に植民地ができると満州に資本・資金が投下されていきます。
そして、このような過度な外延的拡大は戦争を呼び起こし、日本は敗戦しました。
1945年8月18日、ソ連は日ソ中立条約を破棄して千島列島の占守島(しゅむしゅとう)に侵攻し、それから北方領土・千島列島及び南樺太はソ連(現・ロシア連邦)に実効支配されています。
領土問題に関してはここでは触れずに経済的観点から述べると、南樺太がロシアに実行支配されたことによって、北海道における小樽の経済的パワーが相対的に低下していきます。なぜなら、樺太との貿易を独占的に支配していたからです。
日本とソ連の国交は昭和31(1956)年の日ソ共同宣言まで回復していないので、長い間稼ぎの柱であった樺太貿易がなくなった小樽経済は凋落していきます。これには、戦時中の統制経済において、政治的な中枢である札幌に金融機関や本社機能が移転したことも影響しています。
戦後、貿易の重心は日本海から太平洋側に移り、苫小牧が近代的港湾都市として整備されます。

ロシア経済について


さて、一気に時間を現代に戻します。

これまで、戦争による経済の好不況に伴って、北海道の立ち位置や存在意義が変わってきたことを確認してきました。そこには、日露戦争前から続く樺太・千島列島などの領土問題が大きく絡んできました。
では、現在におけるロシアと北海道・日本の経済的な関係性はどうなのでしょうか?これを見ていくにはまずロシアの経済について見ていく必要性があります。
ロシア経済の現況については、経済産業省のこれらのページをもとにまとめます。


ロシア経済を一言でまとめると、「穀物と化石燃料」です。
ロシア経済の大きさを見ると、名目GDPは約1兆4,785億USD(2020年)で日本の1/3、1人あたり所得は約1万USD(2020年)で日本の1/4です。 

まず、穀物についてです。
ロシアは、世界の主要穀物輸出国ランキングで、2017/2018年度には2位のアメリカに1.6倍の差をつけて1位になるほど、世界の重要な穀物供給地でもあります。ウクライナも世界5位につけているので、今回のロシア・ウクライナ情勢で穀物価格が高騰することにも頷けます。穀物を中心とした第1次産業がGDP に占める比率(約4%)を見ても、日本(約1%)と比較して高いです。

次に、化石燃料についてです。
石油や天然ガスなどを含む鉱物性燃料等が輸出全体の約50%を占めている、資源依存型経済といえます。この傾向は長らく変わっておらず、脱却できていないのが現状です。こちらからは、ヨーロッパはロシア産の石油や天然ガスに大きく頼っていたことが確認できます。これにより、ヨーロッパとロシアは年々経済的な結びつきが強くなっていきました。


また、こちらではロシアのGDPや貿易・国際収支などの主要統計の推移を見ることができます。

ロシアと日本の経済的関係性


次に日本とロシアの経済的な関係性について見ていきます。
まずは大まかな交易については、こちらから引用します。


日本はロシアから主に LNG(液化天然ガス)や原油、石炭などの化石燃料を輸入しています。
ロシアからの輸入額(1兆5431億円)は、日本の総輸入額(84兆5652億円)に占める割合は1.82%(2021年)と、貿易の主要相手国ではないですが、エネルギー面での結びつきは強いです。日本からの輸出は、主に自動車やその部品です。 

最近、岸田首相がサハリン2プロジェクトから日本は撤退しない意向を固めたという報道がありました。


これには極東開発が絡んでいます。

プーチン政権は、2000年代から本格的にシベリア極東開発に乗り出しました。なぜなら、大西洋よりもアジア太平洋地域の比重が高まったからです。
さらに、日本もエネルギー安全保障上の観点から中東依存体制からの脱却を図ることに加え、シベリア・極東地域からエネルギーを輸入することによってコストを抑えたいという思惑が働いています。
そのため、2007年のハイリゲンダムG8サミットで、プーチン大統領と安倍首相(当時)は、「極東・東シベリア地域における日露間協力強化に関するイニシアチブ」を締結し、2009年からサハリン2による天然ガスの供給がスタートしました。
さらに、2013年12月の教書演説でプーチン大統領は、ロシアの外交政策のベクトルをアジア太平洋地域にシフトさせることを訴え、シベリア極東地域の開発が国家的プロジェクトであることを宣言しました。
2016年にはプーチン・安倍間で8項目の経済・民生協力プランに基づいて開発を行っていくことに関して合意文書が交わされました。このプランは安倍首相(当時)が提示したものでした。


ロシアのシベリア極東開発及び東方シフトについては、日本国際研究問題所が出しているこちらのレポートをご覧ください。

日本国差問題研究所「ロシア極東・シベリア地域開発と 日本の経済安全保障」.pdf
https://note.com/api/v2/attachments/download/adc979b645cb0027fb2d226c70fa22a7

ロシアと北海道の経済的関係性


次に北海道とロシアの経済的な関係性についてです。この前のえぞトークでも触れられた(24分頃、34分頃です!)ので、ここでは主に輸出入を見ていきます。

北海道庁国際局国際課が出している以下の資料がとても分かりやすいので引用します。


2020年のロシアへの輸出は6200億円、輸入は1.1兆円と総額約1.7兆円で、このうち北海道は輸出が76億円、輸入は710億円で総額約786億円、対全国比でおよそ5%と、ロシアとの交易はあまり活発ではない
ことが分かります。対北海道比でも輸出が3.3%、輸入が8.1%と決して大きくはありません。
内訳をみると、北海道からロシアへの輸出品目は乗用車や機械類、輸入品目は天然ガスや海産物が多くを占めています。特に乗用車に関しては、北海道から輸出される約70%はロシアへ行くので、今回のロシア・ウクライナ情勢で大きく落ち込むことになりそうです。
ただ、全体で見ると北海道の対ロシア貿易額は大きくないことが分かります。ロシアを含む海外と北海道の貿易の詳細はこちらをご覧ください。

このように、ロシアとの経済的な結びつきは全体的に見るとあまり強くはありませんが、ロシアとの姉妹都市提携を結んでいる北海道の都市は他県よりも多いため、2020年には「北海道・ロシア地域間交流推進方針」という、ロシアとの交流を包括的、戦略的に推進するための基本的な方針を策定しました。


北海道・ロシア 地域間交流推進方針.pdf
https://note.com/api/v2/attachments/download/924af42646f0c652c14ecd0296e9b6c6

まとめ


前回の記事では地政学的観点から見たロシアと日本・北海道の関係性、 今回は経済的な観点から見た両者の関係性について確認しました。
北海道は、戦争によって役割や存在意義が変容し、経済的にも大きな変化を辿ってきました。ロシアが進めるシベリア・極東開発は、アジア太平洋地域が次第に外交・安全保障において重要地点になっていくという地政学的な要因によるもので、北海道及び日本はそこに位置しています。 またここには中国や台湾、朝鮮半島もあり、近い将来この地域でも今回のロシア・ウクライナ情勢のようなことが起こるかもしれません。
現在のロシア・ウクライナ情勢はこれからの国際関係や秩序を揺るがす重大な出来事です。もしかすると、これからの動きによっては北海道に新たな役割が求められるかもしれません。

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