女性に特化したITエンジニア育成事業を展開するMs.Engineer(ミズエンジニア)。日本におけるジェンダーギャップの解消に一役買う存在になるのでは…と、注目を集めています。今回は、同社の代表取締役CEOやまざきひとみさんに、Ms.Engineerをスタートした背景や、その特徴的なプログラム。女性を取り巻く環境や、日本のジェンダーギャップの現状などについて詳しくお聞きしました。
目次
- 女性エンジニア育成で見えてきたこと
- 女性エンジニアの育成事業を通して見えてきたもの
- 日本のIT業界のジェンダーギャップ
- 日本女性の雇用環境改善とジェンダーギャップの解消
- 日本のIT人材 まだ女性が圧倒的に少ない
- 女性エンジニアの育成は求職者・企業にとってWin-Win
- 受講者500人以上、内定率90%を支える秘密
- Ms.Engineerが提供するガチトレーニング
- 女性エンジニアの増加で様々な社会課題を解決する
- 東京一極集中は女性中心に起こっている?
- 愛媛のジェンダーギャップ いまだ大きい傾向に
- リスキリングが生む、スキルとキャリアの掛け算
- リスキリングでスキルとキャリアの掛け算を起こせ
- テクノロジーとリモートワークの相性
- テクノロジーは、色々な制約をボーダーレスにする「手段」だ
女性エンジニア育成で見えてきたこと
女性エンジニアの育成事業を通して見えてきたもの
まず、私は「Ms.Engineer(ミズエンジニア)」で女性に特化したITエンジニアの育成をやっております。
ある意味「究極の人材DX」と言えるかも知れませんが、エンジニア未経験の、ITリテラシーも無く、業界のことも分からない女性たちに対してテクノロジー教育を提供し、本当にエンジニアとして活躍する人材に育成するという事業です。
私はかつてサイバーエージェントという会社で働いていましたが、「いつか自分で事業をやりたい」とも思っていました。そして、そのテーマの一つに「リスキリング」がありました。一度社会に出た人材にもう一度、活躍してもらう方法がないか、ということです。
昔、女性エンジニアと働く機会が多い時期があって、「女性エンジニアってかっこいい人が多いな」と思っていたんです。その一方で、「女性エンジニアって、何でこんなに少ないんだろう?」という気づきもありました。また、コロナ禍では日本女性の雇用環境が悪化する様を目の当たりにしました。その頃にこの事業を思いつき、2021年に起業。そこから2年くらいやっています。
Ms.Engineerは、「プログラムがすごく難しい」というのが特徴です。6か月という短期間で、非常にハイクラスの女性エンジニアを育成するために、高難易度の授業を提供しています。それによって「本当に活躍できる」女性エンジニアを育成しています。
Ms.Engineerは、「プログラムがすごく難しい」というのが特徴です。6か月という短期間で、非常にハイクラスの女性エンジニアを育成するために、高難易度の授業を提供しています。それによって「本当に活躍できる」女性エンジニアを育成しています。
コンセプトの一つとして「令和版女子教育」があります。例えば、明治・大正の時代でいうと、女性と男性って教育レベルが同等ではなく「女性は教育を受けるべきではない」とされていた時代もありました。その後、女子の高等教育機関ができ、現在は日本の男女の教育レベルはほぼ一緒になっています。ただ、「IT業界」では、まだまだジェンダーギャップがあるんですね。
こういった「IT教育」「理系教育」とか、男女の教育格差がある分野に対して、女性だけに教育を提供することで、格差の解消に一定の効果があるのではと考えました。それを仮説として立ち上げたところ、かなり反響をいただいて、今女性エンジニアの育成に注力することができています。
日本のIT業界のジェンダーギャップ
日本女性の雇用環境改善とジェンダーギャップの解消
ミッションとしては「日本女性の雇用環境改善とIT業界のジェンダーギャップを解決する」を掲げています。女性エンジニア育成を通じ、いろいろな社会課題も解決していけるということで、「ソーシャルスタートアップ」的な位置づけも強いですね。
「なぜ女性限定か」という点についてもう少しお話します。
まず、日本は「女性不況」という言葉があるくらい、世界的に見ても女性の雇用環境があまり良くありません。ただ一方で、女性の労働人口はすごく増えていて、何と言うか…「女性を活かしきれていない」という現状があります。
例えば、コロナ禍における失業率は女性のほうが高かったり、DX化やAIの進化によって仕事が代替され失業したりするリスクも、女性の比率が高いと言われています。日本では、実に女性の12%が職を失うリスクがあると予測されています。やはり、日本女性の就労環境は良いとは言えません。
例えば、コロナ禍における失業率は女性のほうが高かったり、DX化やAIの進化によって仕事が代替され失業したりするリスクも、女性の比率が高いと言われています。日本では、実に女性の12%が職を失うリスクがあると予測されています。やはり、日本女性の就労環境は良いとは言えません。
もう一つ。現在の日本女性の就労人口って7割を超えているんですが、25〜39歳に関しては、既に8割を超えているんです。その働き盛りの女性のうち、8割に「未就学児の子どもがいる」と言われています。
つまり、「共働き」であるとか「女性が長く働く」ということが前提の社会になってきているにも関わらず、なかなか女性の就業インフラが構造的に追いついていない…という現実があります。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも、日本は男女の賃金格差がかなり大きく、かつ就業環境が悪いというデータがあります。
さらに、女性は「非正規雇用率」が非常に高いという現実もあります。企業がまだ、女性の雇用リスクをとれていないところもあり、なかなか女性が活躍するインフラが整わないなと感じています。
日本のIT人材 まだ女性が圧倒的に少ない
私がいる「IT業界」を見てみると、常に人材不足なんですね。2030年には、最大80万人のIT人材が足りなくなると言われています。確かに、私の周りでもエンジニアの採用にすごくお金をかけている、常にエンジニアを探している、という企業が非常に多い。ただ、「女性のエンジニア」の比率ってすごく低くて、日本で言うと、まだ2割しかいないんです。
「働き方」の視点で見たとき、エンジニアって、女性にとってすごく良い働き方に進化しています。まず、人手不足なので転職ニーズが減らない。だから、一度エンジニアになってしまうとその後転職がしやすいなど、すごく心理的安全性の高い状態で仕事に就くことができます。
また、エンジニアはコロナ禍を経て最もリモートワークが浸透した仕事で、その実施率は80%まで上昇したと言われています。他職種に比べ、時間と場所の自由が効きやすい職種であるということが背景にあると思います。
持続可能なキャリアを築くとき、女性は「手に職を持ちたい」「資格を持ちたい」というふうに考える方が多いと思います。今、エンジニアという技術のスキルを持つということは、いちばん自己投資の効率がいいというか、それだけプロフェッショナルとして長く働ける、最もニーズが高いスキルということがあります。
ニーズが高いと何が起きるかというと、相対的に給与水準も高くなります。20〜30代の女性の平均年収と比較すると、エンジニアの平均年収は最大300万円ほどアップするという見方もあるんです。実際に、私たちが育成した女性が未経験からエンジニアに転職し「1回で年収が100万円以上上がる」みたいなパターンもあったりして。そうすると人生も変わりますし、技術職ってその後も給与が上がりやすい職種なので、女性が経済的自立を目指しやすい職種だと言えます。
女性エンジニアの育成は求職者・企業にとってWin-Win
社会的に見てエンジニアが足りていなくて、特に女性エンジニアは少ない。そして、女性の就労環境が悪いけれども、エンジニアは「働きやすい職種」である。日本女性の雇用環境が悪いにも関わらず、IT業界はこれから慢性的な人材不足に向かうという前提があり、その中で「女性エンジニア」を増やすということに対して、困る人って実は1人もいないんですね。
社会から見ても個人から見ても、「女性が技術を身につけて、活躍していく」ということは、経済成長の大きな切り札にもなります。また、女性って労働力の半分ですよね。半数あるジェンダーの開放を、「技術力を身につける」ことで実現していきたい。それを目指しています。
具体的には、日本で唯一の女性のための「コーディングブートキャンプ」を提供しています。例えば、日本でプログラミングやDXスキルを勉強しようとするとき、自立学習型のオンラインレッスン型がすごく多いんです。クラウドにログインして、動画教材を見て、1人で勉強して進めていくスタイルですね。
一方で、コーディングブートキャンプというのは、クラスを編成して、短期間で高難易度の授業と開発演習をひたすら繰り返すという手法が特徴です。アメリカやヨーロッパでは、エンジニア教育をする際に割とスタンダードになっているプログラミング教育手法ですね。
受講者500人以上、内定率90%を支える秘密
Ms.Engineerが提供するガチトレーニング
当社の場合は、フルオンラインで実施しています。ただ、授業時間を約600時間確保しないといけなくて、遅刻と欠席も原則NG。かなり厳しいプログラムが特徴です。だから受講期間中、5キロ痩せちゃう子がいたりします(笑)。ただ、高い技術力が身に付くことが実証されているプログラムです。
プログラムは、元々メルカリのCTOで現在はLayerXの野村さんという、有名なエンジニアの方に監修をしていただいています。プログラミングには、言語がたくさんあります。一般的なプログラミング教育では、例えば「Python」「Rails」など一つの言語を学ぶ形のスクールが多いんです。ただ、Ms.Engineerでは、この先どんな会社に入っても、どんな開発に向き合っても、どの言語でも書けるよう、言語の「学び方」を学ぶ、メタラーニング的な手法で多言語開発ができるようにしています。
プログラムは、元々メルカリのCTOで現在はLayerXの野村さんという、有名なエンジニアの方に監修をしていただいています。プログラミングには、言語がたくさんあります。一般的なプログラミング教育では、例えば「Python」「Rails」など一つの言語を学ぶ形のスクールが多いんです。ただ、Ms.Engineerでは、この先どんな会社に入っても、どんな開発に向き合っても、どの言語でも書けるよう、言語の「学び方」を学ぶ、メタラーニング的な手法で多言語開発ができるようにしています。
このように、かなり高いスキルを身につけてもらえるよう、プログラムの質にはこだわっています。コンピューターサイエンスから学んだり、生成AIの大規模言語モデルも学べるようにしたり…と、エンジニアさんからも「この期間でこれだけ学ぶの?」とびっくりされるような技術が学べることも特徴です。
期間中の半分は授業で技術を勉強しますが、残りの半分はひたすらチームで開発演習を繰り返します。より実戦に近い経験を積ませることで、技術力だけではなく、いわゆる「ソフトスキル」とか「社会的知性」といわれるような、現場に出たとき一緒に働きたいと思われるような人材に育てるところも重要視しています。
Ms.Engineerを卒業したとき、「認定フルスタックエンジニア」という資格が取れるようになっています。これが、技術的評価、エンジニアとしての技術が身に付くというところ。ただ、それだけではなく非技術系評価も重視しています。例えば、チーム環境とか、ビジネスにおいてどう機能するか、コミュニケーション能力、問題解決能力、主体性やリーダーシップ…。そういったところに対しても、かなり細かく評価項目を設け、すべてクリアしてもらうことを目指しています。そうすることで、しっかり教育レベルを担保しているんです。
Ms.Engineerを卒業したとき、「認定フルスタックエンジニア」という資格が取れるようになっています。これが、技術的評価、エンジニアとしての技術が身に付くというところ。ただ、それだけではなく非技術系評価も重視しています。例えば、チーム環境とか、ビジネスにおいてどう機能するか、コミュニケーション能力、問題解決能力、主体性やリーダーシップ…。そういったところに対しても、かなり細かく評価項目を設け、すべてクリアしてもらうことを目指しています。そうすることで、しっかり教育レベルを担保しているんです。
元々DNAシンガポールのCTOの水野さんという方と、この資格を共同開発しています。しっかり第三者認定を入れて、高い技術力でフルスタックエンジニアとしてのスキルが身につくようなプログラムを提供しています。中身を見ると、「女性限定」は関係ないくらい「ガチでやっている」というのが特徴です。
特色としては、このプログラムを「女性だけで受ける」ということですが、これが意外と「めちゃめちゃいい」と言ってもらえるんですね。それはやっぱり、プログラミングを勉強する、技術者を目指すとなると、一般的には若い男性が多い環境で勉強しなければいけないケースが多いんです。その中で、女性だけで学ぶ環境を提供すると、いわゆるジェンダーバイアスとか、アンコンシャスバイアスみたいなものから開放され、学びに集中できるんですね。
実際の受講者の方からも「質問がめちゃめちゃしやすい」「相談しやすい」「発言しやすい」という声があります。あと、私含め出てくる講師、スタッフが全員、「女性はキャリアアップしたほうがいい」「エンジニアになったほうがいい」と応援してくれる。ポジティブな環境の中で勉強できるので、そういう女性たちの中で勉強することによって、非常に高い満足度を提供できています。
受講者500人以上で内定率は脅威の90%超え
実績としては、累積受講者数500名以上で、転職の内定率も90%以上です。また、未経験から就職するにしては、かなり難易度の高い企業にも就職実績を出せています。就職した女性たちは、本当に「女性」ということしか共通点がないくらい、住んでいる地域やバックグラウンドが違います。例えば、地方公務員の方も非常に多いですね。いろんな女性が、未経験からエンジニアに転身しています。
女性エンジニアの増加で様々な社会課題を解決する
私たちは、女性のエンジニアを増やすことを通じて、いろいろな社会課題を解決できると思っています。そうしていくこと自体が、私たちの一つの役割だと思っていて。IT業界の枠を超えてプログラミング教育をすること以外にも、女性エンジニアを増やす啓蒙活動に力を入れています。
女性エンジニアを業界で育成、輩出していきましょう、というパートナー企業さんも増えています。この間、地方女性のリスキリングを軸に日本IBMさんとの提携を発表しました。今後は地方女性のITのリスキリングによって、地方女性がリモートワークも含めてエンジニアとして活躍できる社会にしていく、ということに力を入れています。
東京一極集中は女性中心に起こっている?
愛媛のジェンダーギャップ いまだ大きい傾向に
これは前提としてのお話になるんですが、世界的に見て、日本のジェンダーギャップ指数ってすごく高いんです。この指数は、経済、教育、健康、政治の分野で測られるんですが、教育の分野は比較的ジェンダーギャップが少なく、経済と政治の分野では大きいと言われています。スコープをより小さくしてみて、東京と地方を比べたときにどうか。ジェンダーギャップの地域差についてみてみると、やっぱり、東京よりも地方のほうが、傾向として大きいんですね。愛媛県も、分野によってはジェンダーギャップが大きいところがあります。
女性がより働いていかなきゃいけない時代の中で、ジェンダーギャップの地域差があると、やっぱり地方女性がどんどん外に出ていってしまう、っていう問題があると思うんですね。だから、ジェンダーギャップの少ない地域に女性人口が転出していく、という傾向がここ数年ずっと起こっています。ある調査では、全国で36道府県が転出超過しているという結果も出ています。愛媛県は今、12位に入っています。
転出超過の36道府県をみてみると、そのうち30のエリアで女性の方の転出数が多くなっています。一方で、東京圏への転入超過数は2008年からずっと増加傾向、そして女性が非常に多くなっているという現実があります。要は、地方からどんどん女性が転出している状態なんです。
東京一極集中は女性を中心に起こっている?
よく「東京一極集中」と言われますが、これって「女性を中心に起こっている」というふうにも言われているんです。では、なぜ女性が東京に一極集中してしまうのかというと、複合的な要因があると思います。
まず、地方では旧来の「日本型雇用」と言われるようなスタイルが定着しているところが多いですよね。日本型雇用って、終身雇用に象徴されるように企業側が男性を長期雇用し、家庭が運営できるだけの賃金を支払います。だから、男性は残業、出張、転勤をするし、あまり限定的ではない働き方をする。
男性と女性は、婚姻で結ばれている。男性が賃金を家庭に入れるから、女性はどちらかというと家事労働で男性を支えると。一方で、企業と女性はすごく弱い依存関係で、企業側は、あまり安定的ではない非正規雇用などを女性に提供することによって、女性側も長時間労働はしない、安定的な労働を提供しないというような形の依存関係にあると思っています。
これは、経済成長している時代の日本では、ある程度合理的であって、定着をしていたわけです。ただ、今の女性からみてみると、「企業が安定的に雇用してくれない」「雇用が不安定だ」というふうに見えてしまう。こういう形で、ジェンダーギャップの再生産をしてしまうという構造になるんですね。
上京経験のある女性に、上京理由を聞いたアンケートで「都会への憧れがあった」が多いという結果があります。やはり、ジェンダーギャップが少ない地域になんとなく憧れを持つ、という構造になるのだろうと思います。
ただ、東京で生活すれば豊かになるのかというと、実際はいろんな問題があります。例えば今、東京だと家賃上昇とか物価高が顕著で、実質賃金が下がっている…ということもあり、必ずしも「東京に移住すれば豊かに暮らせる」「働ける」ということではないと思っています。
リスキリングが生む、スキルとキャリアの掛け算
リスキリングでスキルとキャリアの掛け算を起こせ
ここに、一つヒントがあるんじゃないかなと思っていて。
実は、Ms.Engineerってすごく地方女性が多いんです。東京以外に住む女性が7割以上ということで、北海道から沖縄まで生徒さんがいらっしゃいます。彼女たちの中には「技術を学んでキャリアアップする方法があったんだ!」と、希望を持って問い合わせてくださる方が非常に多くて。ここまで、すごく真面目に働いてきたし、これからも長く働き続けたいから、長く需要があるスキルを身につけて活躍したい!という方が相談に来られるパターンが多いです。
これ自体が、リスキリングの面白さだなと思っていて。日本では、20〜30代というライフステージが変化する前にすごく真面目に働いてきた女性の人口がどんどん増えてきていているんです。
リスキリングは、それまでのキャリアやスキルがリセットされる訳ではなく、そこに例えばテクノロジーのスキルをかけ算することによって、また新しいことができるようになる。さらにもう1回、そこから「活かせる人材」になれるということなんです。20〜30代で企業側も力を注いで育成してきた人材に対してリスキリングすることによって、スキルやキャリアのかけ算が起こるというところが「面白さ」だなと思います。
テクノロジーとリモートワークの相性
技術職を目指す女性の、一つのキーワードとして「リモートワーク」というのがあります。
リモートワークに関して当社でアンケートを取ったんですが「完全出社になった場合、育児と仕事の両立ができるイメージは湧きますか?」という問いに対し、8割くらいが「いいえ」と答えているんです。やっぱり、ライフステージの変化がある女性にとって「リモートワーク可能な仕事に就きたい」という希望って、本当に切実な要望というか…。「両立できないけど仕事しなきゃいけないから、フルリモートとはいわないけど、リモートワーク可能な仕事に就きたい」と。そのためには、もしかしたら技術を身につければ可能性が広がるんじゃないか、と考えて「Ms.Engineer」に来られる方が非常に多いんです。
地方の女性はお子さんが生まれると、基本的には居住地域が限定されます。一方で、例えば東京の会社も出社体系に戻ってきていて「週2〜3回は出社してください」みたいな会社が増えているんです。そうなると地方の女性って、東京の企業に就職できなくなる…。なので、フルリモートとか、地元の企業でリモートワーク可能な働き方になれば、「もう、それだけで幸せ」みたいな方がすごく多くて。そういった中で、リモートワークと技術の相性が意外といいので、ここは一つの活路になるんじゃないかなと思います。
Ms.Engineerの卒業生の方で、都市部に住まわれていて、未経験から8か月勉強されて、エンジニアに転職された方がいらっしゃいます。この方は東京の会社にフルリモート・フルフレックスで勤務をされ、そこから香川に移住をされました。都市部で働いて残業があった時から比べると、人生ががらっと変わったとおっしゃっていて。技術職ってコードを書いて開発するので、究極的には時間とか場所は関係ないんですね。なので、スキルを身につけることで働き方を変え、長期的に安定的に活躍できることで、「心理的安全性」がかなり高い働き方に変わった方もいらっしゃいます。
テクノロジーは、色々な制約をボーダーレスにする「手段」だ
私たちが、技術教育する上で生徒さんに言っているのは「テクノロジーは課題解決の手段だ」ということです。テクノロジーの本質って、やっぱりいろんな制約をボーダーレスにしていくという「解決手段」だと思うんですね。なので、本質的にいうと、もちろん場所も関係ないし、ジェンダーも関係ないし、本当は年齢も関係ない。技術力があれば、いろんなことを超えていけると思います。
企業側から見ても、女性に限らず従業員に技術力を身につけさせたり、DX教育とかITの育成をしたりすることで、業務効率化もそうですが、さまざまなルールを刷新したり、いろいろな可能性を広げるキッカケになると思います。特に、ジェンダーとか働く場所とか、そういう従来の就業スタイルにとらわれない働き方にアップデートしていくとき、「テクノロジー」というのはすごく相性がいいんですね。
なので、リスキリングによって技術的に優秀な女性を地方から輩出することに、今後すごく可能性があるんじゃないかと思っています。今後そういった可能性を、一緒に広げていければいいなと思います。