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【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」⑨ ~道央経済入門・胆振編~

【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」⑨ ~道央経済入門・胆振編~

えぞ財団 2022年5月19日

◯北海道経済入門とは?


この連載では、小樽商科大学4年生(休学中)の神門崇晶(カンドタカアキ)が北海道経済についての「今さら聞けない」 という部分を探っていきます。例えば、北海道の経済の大きさはどれくらいなのか?それを構成する北海道の主要産業は何か?など北海道経済の基本的な部分を理解していくことをインフォグラフィックを通して試みるプロジェクトです。

神門崇晶(かんどたかあき):小樽商科大学4年生(休学中)。
札幌北高校を卒業し1年間の浪人生活を経て、小樽商科大学に2019年に入学。同年11月に「カレーパンドラ小樽商大店」をオーナーと共にオープン。コロナ禍により同店を休業し、2020年にYoutubeチャンネル「おたる再興戦略室」を開設。これをきっかけに、2021年4月から「札幌解体新書」の学級委員長を務める。


◯導入


前回から、③「北海道産業地図」と④「北海道の経済状況」をベースに、道央地域の経済について振興局別に詳しく見ていくことになりました。
前回は、⑧「道央経済入門 後志編」として、後志管内の基礎知識・経済についてまとめました。

【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」⑧ ~道央経済入門・後志編~
https://note.com/ezozaidan/n/n7f2d0bc57886


さて、今回は、苫小牧市・室蘭市という、2つの「国際拠点港湾」を擁する胆振総合振興局を見ていきます。

◯本日のインフォグラフィック


◯胆振ってどんな地域?


そもそも、「胆振」とはどういった地域なのでしょうか?
それでは、胆振地域の「今さら聞けない」基本的な部分をまずは見ていきましょう。

まずは、市町村数です。
胆振地域には11市町(4市7町)が属します。
そして、胆振西部・胆振中部・胆振東部の3地域に分類されます。
内訳は以下の通りです。

胆振西部:豊浦町・洞爺湖町・壮瞥町・伊達市(大滝・伊達)
胆振中部:室蘭市・登別市・白老町・苫小牧市
胆振東部:安平町・厚真町・むかわ町

道央全体で70市町村で、自治体数的には約15.7%を占めます。また、道央地域の中では、24市町(10市14町)を擁する空知総合振興局、20市町村の後志総合振興局に次いで3番目の多さです。
面積は、第128回(令和3年)北海道統計書から引用します。


面積(平成27〜令和元年)は、3,697㎢と、道央地域全体(22,145㎢)の約16.7%、北海道全体(83,424㎢)の約4.4%を占めます。道央地域内では、5振興局の中で4番目の大きさです。


人口(令和3年住民基本台帳)は、約38万2700人で道央地域全体(約331万人)の約11.5%、北海道全体(約522万人)の約7.3%を占めます。特に、苫小牧市(約17.0万人)と室蘭市(約8.1万人)を擁する胆振中部が約31万人で、胆振全体の約82.3%の人口を抱えています。

人口増減グラフからは、年少人口・生産年齢人口ともに1985年から既に減少局面に入っており、それまで増加していた老年人口も2025年からは減少局面に入っていくことがわかります。




「港湾都市」という共有点をもつ苫小牧市と室蘭市ですが、この2都市は港湾法という法律において「国際拠点港湾」に日本政府から指定されています。そして、どちらも第二次産業のまちとして、胆振地域の経済をリードしています。


次に、高齢化率についてです。


「令和3年度住民基本台帳 振興局市区町村別年齢5歳階級別人口【地域行政局市町村課調べ】」のデータを基に見ていきます。

高齢化率は、
高齢者人口÷(総人口—年齢不詳人口)×100=高齢化率(%)
で計算することができます。
内閣府の令和3年版高齢社会白書によると日本全体では、老年人口が3,619万人で高齢化率は28.8%(男性:25.7%、女性:31.7%)です。


北海道全体では、老年人口が約167万人で高齢化率は31.9%(男性:28.3%、女性:35.2%)です。

では、胆振の高齢化率はどうなのでしょうか。

胆振の人口は、約38万2700人で老年人口は4.1万人、高齢化率は34.3%(男性:30.3%、女性:38.1%)で、道央では空知(39.9%)、後志(38.6%)、日高(34.8%)に次いで4番目の数字です。
最も低いのが苫小牧市の29.4%(男性:26.1%、女性:31.5%)で、高いのが白老町の45.7%(男性:41.9%、女性:49.0%)です。ちなみに、室蘭市は37.7%(男性:32.4%、女性:42.7%)です。
胆振総合振興局の各市町村の概要は、こちらによくまとまっています。


◯胆振の歴史


では、次に胆振の歴史をみていきましょう。
今回は主に、室蘭市と苫小牧市の歴史を対比させながら見ていきます。
この2都市は、港湾都市としての盛衰を物語る好例です。
そして、これは第二次産業が盛んな胆振全体の話にも繋がっていきます。

室蘭の歴史


港湾都市としての歩みを進めたのは、まずは室蘭の方でした。
前回(⑦道央経済入門・後志編)では、北前船の歴史を扱いました。
この北前船の歴史で主に出てくるのは小樽港ですが、ほぼ同時期に室蘭港も港湾都市として歩みを進めました。
両都市に共通するのは、「天然の良港」という点です。



どちらの都市も背後に山があるため、自然な傾斜地になります。なぜ、傾斜地の方が良いかというと、大型船が入るために十分な水深を確保できるためです。特に室蘭港は、「コ」の字のような入り組んだ土地であるために、港の敵である潮風をシャットアウトすることができます。
明治27(1894) 年に室蘭港は特別輸出港に指定され、北海道炭鉱鉄道が石炭の積出港として利用し始めてから港湾都市として発展していき、大正2(1923)年の都市計画法によって、札幌・小樽・旭川・函館とともに、それまでの区制から市制に移行しました。(ちなみに、2022年は、室蘭港開港150年・市制施行100年のメモリアルな年です。札幌も、市制施行100年・政令指定都市移行50年なんですよ!)
良港の条件をクリアしている室蘭港は、小樽港と共に空知管内で採れる石炭の積出港として機能し、北海道有数の港湾都市としての立ち位置を築きます。そのため、2019年には小樽市などと共に「炭鉄港」として日本遺産に認定されました。


明治28(1985)年
には、石炭、米、麦、麦粉、硫黄の5品目の輸出量が小樽港を超え北海道のトップに躍り出ました。その後、北炭は小樽港を国内向け、室蘭港を外国向けの輸出炭を取り扱う港と区分し、両都市は競い合うように港湾都市として(小樽は金融・経済都市としても)発展していきます。
また、「鉄のまち」と形容される室蘭は、戦前から鉄鋼の製造を行っていました。明治40(1907)年、北炭は1907 年日本製鋼所(株)を設立し、2年後の昭和42年には日本で3番目の製鉄所とされる、北海道炭鉱汽船輪西製鉄所が設立されました。
昭和20年の終戦までは、海軍と関係性のあった北炭の影響もあり、軍需によって室蘭市は発展していきました。戦後は、朝鮮戦争特需や高度経済成長による鉄鋼需要の増大があり、昭和45(1970)年には最高の16.2 万人にまで達しましたが、製造業の事業所数・従業員数共に減少していき、それに伴う形で現在はピーク時から半減の約8.1万人にまで減少しています。

このように人口減少が著しい室蘭市では、以下のような「室蘭市人口ビジョン」が取りまとめられています。
https://www.city.muroran.lg.jp/main/org2200/documents/4_r1-3shiryo1.pdf

室蘭市の盛衰についてはこちらをご参照ください。
https://www.senshu-u.ac.jp/~off1009/PDF/180220-geppo654,655/smr654-sida.pdf

苫小牧の歴史


対して、苫小牧市を見ていきましょう。


苫小牧市も室蘭市と同様に、「国際拠点港湾」に分類されていますが、港湾としての歴史は約50年ほどと、室蘭市(150年)よりも約1/3ほどの長さです。
苫小牧港は東西に分かれており、苫小牧市内の西港区は世界初の内陸掘込式港湾として昭和38(1963)年に開港し、厚真町にまでまたがる東港区は苫小牧東部開発計画によって昭和55(1980)年に開港しました。

苫小牧港開港の背景には、このようなことがありました。
以下、こちらから引用します。
https://www.hkk.or.jp/kouhou/file/no607_gyousei-1.pdf

苫小牧開港の前年に第一次全国総合開発計画がつくられ、この中で、北海道は産業開発地域として整理され、道央の中心として苫小牧港が位置付けられます。そこで、まずはそれまで小樽港や室蘭港が行っていた、石炭の積出港から機能を開始していったのです。

開港してすぐに第一次オイルショックがやってきたことにより、長崎の青方港、北九州港とと共に苫小牧港に備蓄港湾制度ができました。1996年には、北海道の中核国際港湾として位置付けられ、97年に東港で国際コンテナターミナルが供用開始されます。さらに、2011年の港湾法改正で、苫小牧港は国際拠点港湾に位置付けられました。

そして、苫小牧港は西と東で性格が異なります。
西港は、主に戦前から立地していた製紙・パルプ業の企業(王子製紙・日本製紙など)が多くを占めています。また、苫小牧港の移入量の約70%を占める自動車・自動車部品の製造を行うトヨタ自動車北海道も立地しています。
東港は、主に自動車・自動車部品製造業と電力・エネルギー業が立地しています。自動車・自動車部品製造企業はダイナックスやいすゞが挙げられ、電力・エネルギー企業では、2018年の胆振東部地震で被災した苫東厚真発電所がここに位置します。

このような歴史的な背景があり、今日の苫小牧港があります。
苫小牧港に関して、詳しくはこちらをご覧ください。


室蘭港と苫小牧港は、このように全く異なったプロセスを踏んで、異なった性格をもつ港湾都市として、胆振のみならず北海道の第二次産業や物流を支えているのです。

◯胆振の経済・産業


では、胆振の経済・産業(主に室蘭・苫小牧経済圏)を見ていきましょう。

ここからは、北海道庁が出している、平成30年度(2018年度)道民経済計算年報と、苫小牧市・室蘭市が出しているデータを中心に見ていきます。


胆振総合振興局の産業構造は、第二次産業の構成比が41.3%と、北海道平均(20.5%)よりも格段に大きいのが特徴です。この内訳を見ていこうと思います。
製造業が75.7%であり、これが主となっています。
この内訳を見ると、石油・石炭製品が37.7%輸送用機械が18.3%、一次金属(製鉄・製鋼など)が17.2%と、これらが大きな割合を占めています。

製造業の中でも、石油・石炭製品並びに輸送用機械は苫小牧市、一次金属は室蘭市のシェアが高くなっています。

以下、それぞれ見ていきましょう。
まずは、室蘭市からです。

室蘭市の経済・産業







室蘭市における付加価値額(企業単位)は、第二次産業の製造業(22.7%)と建設業(12.6%)で約35%を占めていることから、やはり第二次産業のまちだと言えるでしょう。その内訳を見ると、50%以上が鉄鋼業です。

室蘭全体の企業数の5.3%を占める製造業が、室蘭全体の付加価値額(企業単位)の22.7%を占めている
ことが大きな特徴です。鉄鋼業によって室蘭の経済が成り立っていると言えるでしょう。これは、従業者数からも見てとれます。








従業者数推移を見ると、鉄鋼業従業者数が一時は減少したものの、現在は再び増加傾向にあります。従業者数全体の14.5%を製造業従事者が占め、そのうちの47.5%と約半数を鉄鋼業従事者が占めています。室蘭市は現在においても、やはり「鉄のまち」です。

ただ、鉄鋼以外の大きな産業基盤がないことは、これからの室蘭市にとってどのような影響を及ぼしていくのでしょうか。

苫小牧市の経済・産業






苫小牧市における付加価値額(企業単位)は、第二次産業の製造業(22.5%)と建設業(12.9%)で約35%を占めています。室蘭市と似たような構造であり、やはり第二次産業のまちだと言えるでしょう。その内訳を見ると、65%以上が輸送用機械器具製造業、つまり自動車及び自動車部品製造業です。

苫小牧全体の企業数のたった4.8%しか占めない製造業が、苫小牧全体の付加価値額(企業単位)の22.5%を占めていることが大きな特徴です。次に従業者数を見てみます。





従業者数推移を見ると、一貫して自動車・自動車部品製造従業者数が増加しています。従業者数全体の14.7%を製造業従事者が占め、そのうちの53.1%と半数以上を自動車・自動車部品製造従業者が占めているという状況です。自動車・自動車部品製造従業者数の増加と苫小牧市の人口増加の相関関係は大きいものと推察されます。
ただ、現在の自動車業界は、欧州主導によるEVへの転換が求められており日本の自動車メーカーは各社転換点に差し掛かっています。エンジンだけでも1万点以上を必要とするガソリン車よりも、EVは部品点数が少ないため、仮に全世界的にほぼ全てのガソリン車がEV車に移行すると、日本国内だけで30万人の雇用が失われるという推計があります。その真実はどうなのでしょうか。


ただ、製造業、主に自動車部品製造従事者の多い苫小牧市は、新たな産業基盤をもつことが2030年頃までに早急に求められると考えられます。

また、苫小牧市は既に触れた通り港湾都市です。以下のグラフをご覧下さい。

苫小牧港は、2020年における北海道の港湾の取扱貨物量で全道1位、日本全国の内国貿易貨物量でも全国1位であり、日本有数の港湾都市ということがわかります。

最後に、このような面白いグラフもあります。

貨物量の増加・減少に伴って市の人口も増加・減少しています。また、今回は触れませんでしたが苫小牧市は新千歳空港も抱えています。まさに、苫小牧市は自動車、船舶、飛行機と陸海空全てによって成り立っている都市と言えるのではないでしょうか。

次回の記事もご覧いただけると幸いです!

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【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」⑧ ~道央経済入門・後志編~
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