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【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」⑩ ~道央経済入門・日高編~
えぞ財団
2022年6月2日
目次
北海道経済入門とは?
この連載では、小樽商科大学4年生(休学中)の神門崇晶(カンドタカアキ)が北海道経済についての「今さら聞けない」 という部分を探っていきます。例えば、北海道の経済の大きさはどれくらいなのか?それを構成する北海道の主要産業は何か?など北海道経済の基本的な部分を理解していくことをインフォグラフィックを通して試みるプロジェクトです。
コミュニティスタッフ 神門 崇晶 | DRIVE
https://sih-d.jp/news/%e3%82%b3%e3%83%9f%e3%83%a5%e3%83%8b%e3%83%86%e3%82%a3%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%83%e3%83%95-%e7%a5%9e%e9%96%80-%e5%b4%87%e6%99%b6/
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神門崇晶(かんどたかあき):小樽商科大学4年生(休学中)。
札幌北高校を卒業し1年間の浪人生活を経て、小樽商科大学に2019年に入学。同年11月に「カレーパンドラ小樽商大店」をオーナーと共にオープン。コロナ禍により同店を休業し、2020年にYoutubeチャンネル「おたる再興戦略室」を開設。これをきっかけに、2021年4月から「札幌解体新書」の学級委員長を務める。
導入
第8回「道央経済入門〜後志編〜」から、③「北海道産業地図」と④「北海道の経済状況」をベースに、道央地域の経済について振興局別に詳しく見ています。前回は、⑨「道央経済入門〜胆振編〜」として、苫小牧・室蘭という2つの「国際拠点港湾」を擁する胆振総合振興局を見ていきました。
胆振地域は、自動車部品製造業や、製紙・パルプ業を中心として、第二次産業が盛んな地域です。室蘭と苫小牧はまさに表裏一体の関係です。戦後に苫小牧港が整備されるまでは室蘭港が港湾都市として機能し、人口も増大し経済も活発でした。
しかし、苫小牧西港の開港(1963年)、東港の開港(1980年)の開港後は、室蘭港に代わって、苫小牧港が港湾都市として徐々に機能していきます。それによって、苫小牧市の人口は室蘭市とは対照的に増加し続け、高齢化率も比較的低め(29.4%)です。
しかし、苫小牧西港の開港(1963年)、東港の開港(1980年)の開港後は、室蘭港に代わって、苫小牧港が港湾都市として徐々に機能していきます。それによって、苫小牧市の人口は室蘭市とは対照的に増加し続け、高齢化率も比較的低め(29.4%)です。
この2都市の栄枯盛衰はまさに、「産業・経済・都市」の関係を見るにふさわしい例だったと思います。
【#えぞ財団】 連載企画「#北海道経済入門」⑨ ~道央経済入門・胆振編~
さて、今回は日本有数の馬産地である、日高振興局を見ていきます。
なぜ日本有数の馬産地になったのか?馬産と経済の関係性とは?
それでは、見ていきましょう!
なぜ日本有数の馬産地になったのか?馬産と経済の関係性とは?
それでは、見ていきましょう!
◯本日のインフォグラフィック
◯日高ってどんな地域?
そもそも、「日高」とはどういった地域なのでしょうか?
日高地域の「今さら聞けない」基本的な部分をまずは見ていきましょう。
日高地域の「今さら聞けない」基本的な部分をまずは見ていきましょう。
市町村数
まずは、市町村数です。
日高振興局には7町が属し、自治体数的には道央(70市町村)の中では最も少ないです。また、檜山振興局と並んで、「振興局所在地が『市』でない振興局」であるとともに、「管内に『市』を持たない振興局」です。そして、以下のように分類されます。
日高西部:日高町(日高・門別)、平取町
日高中部:新冠町、新ひだか町
日高東部:浦河町、様似町、えりも町
面積
面積は、第128回(令和3年)北海道統計書から引用します。
面積(平成27〜令和元年)は、4,811㎢と、道央地域全体(22,145㎢)の約21.7%、北海道全体(83,424㎢)の約5.8%を占めます。道央地域内では、5振興局の中で空知(5,792㎢)に次いで2番目の大きさです。
人口
人口(令和3年住民基本台帳)は、約6万4300人で道央地域全体(約331万人)の約1.9%、北海道全体(約522万人)の約1.2%を占めます。因みに、人口密度(2015年)は日本が341人/㎢、北海道が68.6人/㎢なのに対し、日高管内は14.3人/㎢と、日高地方は面積が大きく人口が如何に少ないかがわかります。
人口増減グラフからは、年少人口・生産年齢人口ともに1985年から既に減少局面に入っており、老年人口は2025年からは減少局面に入っていきしばらく横ばい状態が続きますが、2040年には生産年齢人口を上回る想定です。
高齢化率
次に、高齢化率についてです。
「令和3年度住民基本台帳 振興局市区町村別年齢5歳階級別人口【地域行政局市町村課調べ】」のデータを基に見ていきます。
高齢化率は、
高齢者人口÷(総人口—年齢不詳人口)×100=高齢化率(%)
で計算することができます。
内閣府の令和3年版高齢社会白書によると日本全体では、老年人口が3,619万人で高齢化率は28.8%(男性:25.7%、女性:31.7%)です。
北海道全体では、老年人口が約167万人で高齢化率は31.9%(男性:28.3%、女性:35.2%)です。
では、日高の高齢化率はどうなのでしょうか。
日高の人口は、約6万4300人のうち老年人口は2.4万人、高齢化率は34.8%(男性:30.1%、女性:39.4%)道央では空知(39.9%)、後志(38.6%)に次いで3番目の数字です。
日高の人口は、約6万4300人のうち老年人口は2.4万人、高齢化率は34.8%(男性:30.1%、女性:39.4%)道央では空知(39.9%)、後志(38.6%)に次いで3番目の数字です。
人口ピラミッドを見ると、特に20代の女性が少ないことがわかります。この年齢層の女性が少ないので、人口減少に拍車がかかっているのだと推測されます。
◯日高の気候と歴史
では、次に日高の気候と歴史をみていきましょう。
気候
日高地方は歴史的に日本有数の馬産地で、これには気候が大きく関係しています。なので、この2点を並べて見ていきましょう。
日高地方は、降雪が当たり前の北海道において唯一の、「雪が積もらない地域」と言っても過言ではありません。そして、気温は秋~冬は温暖な傾向が強く、春~夏は逆に気温がやや上がりにくい、という特徴をもっています。
気象庁のデータによると、8月の平均気温は札幌が23.3℃なのに対し、日高地域の新ひだか町・静内、浦河はおよそ2℃も低いです。冷涼な気候と言えるでしょう。また、驚くべき点は、積雪量が真冬の2月でも最深積雪量が10cm前後だということです。北海道においては極めて稀であり、この特徴的な気候が、日高地域が日本有数の馬産地となった要因でもあります。
また、北海道においてこのような特異な気候条件をもつ日高地域には、1つのジオパークと1つの国定公園があります。ここからは、昭文社『北海道のトリセツ』pp.32-33から引用します。
北海道にある5つの日本ジオパーク(三笠、白滝、洞爺湖有珠山、アポイ岳、十勝鹿追)のうち2つがユネスコの世界ジオパークに認定されています。 それが洞爺湖有珠山とアポイ岳であり、このアポイ岳は世界的にも稀な地質的価値を有しています。
アポイ岳は、地球の内部の上部マントルの岩石であるカンラン岩によって構成されており、ここのカンラン岩はほとんど変質していないことが特徴です。またアポイ岳は形成されてから一度も海面下に沈んだことがありません。つまり、誕生した当時(約1300万〜4000万年前)の植物がそのまま残っているということです。
このように、アポイ岳は数千万年前の当時の地球を知ることができる極めて貴重な場所といえます。
また、 日高山脈襟裳国定公園もあり、手つかずの雄大な自然を感じることのできる数少ない場所なのです。
歴史
ここからは、日本有数の馬産地となった歴史を見ていきましょう。以下の文は、日高振興局「馬文化ひだか」、昭文社『北海道のトリセツ』pp.116-117より引用します。
日高路発馬文化情報総合サイト「馬文化ひだか」 - 日高振興局地域創生部地域政策課
https://www.hidaka.pref.hokkaido.lg.jp/ts/tss/umabunka/index.html
https://www.hidaka.pref.hokkaido.lg.jp/ts/tss/umabunka/index.html
日高地域で飼養されている馬種は、江戸時代に連れられてきた南部馬が冬期間北海道に放置され気候風土に適応するようになった北海道和種であるドサンコではなく、軽馬種、つまりサラブレッド種です。
サラブレッド種は、皮膚が薄く暑さに弱いため、日高地方の気候が適しているためです。今では同地域の主要産業になった馬産ですが、馬産の基礎が築かれたのは明治時代にまで遡ります。
明治5(1872)年、開拓使はお雇い外国人エドウィン・ダンの助言を受けて新冠牧場を西洋式牧場として開設・整備しました。厩舎・官舎・見回舎・牧柵などの施設や、静内方面に広大な飼料畑を開墾するなど、北海道馬産政策の拠点として整備されました。
そして明治40(1907)年には、軍馬改良を目的として浦河町に日高種馬牧場が開設され、戦前の北海道馬産の基礎が築かれました。
明治5(1872)年、開拓使はお雇い外国人エドウィン・ダンの助言を受けて新冠牧場を西洋式牧場として開設・整備しました。厩舎・官舎・見回舎・牧柵などの施設や、静内方面に広大な飼料畑を開墾するなど、北海道馬産政策の拠点として整備されました。
そして明治40(1907)年には、軍馬改良を目的として浦河町に日高種馬牧場が開設され、戦前の北海道馬産の基礎が築かれました。
このように戦前からサラブレッドは飼養されていたのですが、当時の農業の中心は馬産ではなく大豆やそばの栽培でした。
この状況が変わるのが、戦後のGHQによる占領政策です。当時、馬産の中心地であった下総御料牧場と小岩井農場においてサラブレッドの生産が止められたのに対し、日高地方では戦前からの馬産が基礎となり一大産地としての歩みを進めていきます。
そして、昭和45(1970)年以降の第1次競馬ブーム、バブル以降の第2次競馬ブームを追い風に「サラブレッドのふるさと」と呼ばれるまでの一大馬産地として成長していきました。
では、この馬産業はどれほど経済に寄与しているのでしょうか?
それは、次の「日高の経済・産業」で明かされます!
それは、次の「日高の経済・産業」で明かされます!
◯日高の経済・産業
では、日高の経済・産業を見ていきましょう。
ここからは、北海道庁が出している、平成30年度(2018年度)道民経済計算年報を中心に見ていきます。
平成30年度(2018年度)道民経済計算年報 - 経済部経済企画局経済企画課
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kks/ksk/tgs/keisan-kakuhou.html
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kks/ksk/tgs/keisan-kakuhou.html
日高振興局の産業構造は、第1次産業の構成比が18.4%と、北海道平均(4.3%)よりも格段に大きいのが特徴です。「農業王国」と表現されるほど第1次産業の盛んな十勝地域ですら構成比は12.9%なので、日高地方の農業のが盛んさがわかります。
ただ、第1次産業の人手不足は深刻なようです。
6月から、日高振興局職員には農漁業関連を主な対象として副業が解禁されます。副業に就く職員を「サポーター」として任命する「ナナイロひだかサポーター制度」という名称で、現時点で全職員の5分の1に当たる約60人が希望しているようです。副業を原則認めない行政では、まさに奇策ですが、それほど人手不足が深刻化している、という表れでしょう。
さて、この内訳を見ていきます。
第1次産業の内訳は、農業が75.0%、林業が2.1%、漁業が22.9%です。
農業について詳しく見ていきます。
農業について詳しく見ていきます。
農業の産業構成比が大きい北海道と比較しても、農業・林業の付加価値額の大きさが特徴的です。このうち、農業が91.8%、林業が8.2%です。
企業数でも農業・林業の構成比が大きいです。
また、従業員数をみても、全国や北海道で従業員数の構成比が大きな卸・小売業よりも農業・林業が優位であり、日高地域の基幹産業が農業であることがわかります。
企業数でも農業・林業の構成比が大きいです。
また、従業員数をみても、全国や北海道で従業員数の構成比が大きな卸・小売業よりも農業・林業が優位であり、日高地域の基幹産業が農業であることがわかります。
農業が盛んなため、それに伴って産業も育ちます。第2次産業に分類される食料品製造業です。
日高における第2次産業は、付加価値額の80%を食料品製造業が占めており、従業員数も66%を占めています。林業に伴う木材・木製品製造業も付加価値額、従業員数では食料品製造業に次いでいます。農業・林業が、他の産業の雇用も生んでいることがわかります。
では、日高地域ではどのような農業が盛んなのでしょうか?
こちらは、主要農作物・畜産物別付加価値額のヒートマップです。日高地域では、100億円の付加価値を生み出す新ひだか町が付加価値額という基準では最も農業が盛んだといえます。
これらを主要農作物・畜産物別に大まかに分類すると
野菜:平取町
麦類:日高町、新冠町
その他の畜産物:新ひだか町、浦河町、様似町
となります。
では、労働生産性(企業単位)を見てみましょう。
RESASの機能の限界で、日高町のみ除外しています。
肉用牛の飼育を主産業としているえりも町の労働総生産が突出しています。なんと、えりも町の労働生産性は北海道で1位、全国で8位でした。
国内で飼育される肉用牛のわずか1%に満たない希少な牛である、日本短角牛の一種である「えりも短角牛」に代表される肉用牛の飼養を主としています。
肉用牛の飼育を主産業としているえりも町の労働総生産が突出しています。なんと、えりも町の労働生産性は北海道で1位、全国で8位でした。
国内で飼育される肉用牛のわずか1%に満たない希少な牛である、日本短角牛の一種である「えりも短角牛」に代表される肉用牛の飼養を主としています。
えりも町では、明治28年ごろから導入され、戦後には漁家の凶漁時の収入を補うために漁業との兼業で飼育が再開されました。それが今では、希少なブランド牛となっています。
さて、次に新ひだか町、浦河町、様似町が主産業としている「その他の畜産物」を見てみましょう。これには、「日高の気候・歴史」で触れた軽種馬の飼養が含まれます。
では、どれほど盛んなのでしょうか?
公益社団法人日本軽種馬協会の「生産関連統計」によると、全国784戸のうち84.4%が日高産の軽種馬です。しかし、全体の戸数及び日高地方での戸数は年々減少しており、2001年の1579戸から20年間で半減しています。
ただ、農林水産省生産局畜産部競馬監督課「馬産地をめぐる情勢」によると、この軽種馬の飼養産業は、農業産出額に占める割合が5割を超える重要な産業といえます。
まとめ
今回、このように纏めるまでは日高地域の主産業はほとんど知りませんでした。なんとなく、馬が有名だから盛んなのかなというくらいの知識です。まさか、総生産で見た産業構成比18.4%を占める第1次産業において、農業産出額に占める割合が5割を超えるほど重要な産業だとは、想像もしていませんでした。
このような馬産地となった要因に、気候と歴史が深く関係していることからも、この2要素が諸地域における経済・産業の定着・発展に不可欠な要素であることも再認識しました。
ただ、日高地域における課題として、主要産業である馬産市場の縮小が挙げられます。公益社団法人日本軽種馬協会の「生産関連統計」からも分かるように、毎年飼養農家が減少しており、1農家あたりの飼養頭数が増加しているとはいえ、市場全体で見ると縮小傾向にあることは自明です。日高地域全体として、これからは馬産に代わるような新しい産業を育成する必要性があるのかもしれません。
新しい産業の候補として、観光が挙げられるかと思います。既に述べたように、日高地域は北海道ではありますが、誰もが想像する北海道とは少し異なっています。夏は比較的冷涼で、冬には雪が積もらず、数千万年前の地球を知ることができるジオパークや国定公園を有しています。また、一大馬産地という特徴もあります。
ただ、交通の便が悪いというマイナスな点があるため、この問題をクリアする必要性がありそうです。
また産業については、飼養農家の後継者問題などの問題もあります。2040年には、老年人口が生産年齢人口を上回ります。これによって、産業の担い手不足問題や、自治体における財政問題が顕在化するでしょう。
次の記事も読んでいただけると嬉しいです!
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