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  • 【#えぞ財団】連載企画「#この人、エーゾ」⑧弟子屈町地域おこし協力隊川上さん~uhbアナウンサーを辞め、過疎地域とともに歩むことを選んだ「町公認アナウンサー」の挑戦の日々~
【#えぞ財団】連載企画「#この人、エーゾ」⑧弟子屈町地域おこし協力隊川上さん~uhbアナウンサーを辞め、過疎地域とともに歩むことを選んだ「町公認アナウンサー」の挑戦の日々~

【#えぞ財団】連載企画「#この人、エーゾ」⑧弟子屈町地域おこし協力隊川上さん~uhbアナウンサーを辞め、過疎地域とともに歩むことを選んだ「町公認アナウンサー」の挑戦の日々~

えぞ財団 2021年5月6日

組織のなかで、マチのなかで、もがきながらも新たなチャレンジをしているひとを紹介する「この人、エーゾ」。今回は、民間放送局のアナウンサーを辞め、道東弟子屈町の地域おこし協力隊の仕事に就いた川上涼輔さんをご紹介します。

川上涼輔(かわかみりょうすけ):1995年宮城県大崎市出身。2018年にuhb北海道文化放送局入社。フィールドキャスターとして2年半、情報番組などを担当し退職。弟子屈の地域おこし協力隊になり同町に移住。空き家をリノベし、暮らす。趣味はウィンドサーフィンとサウナ。

”テレビの中の人が弟子屈に”目に見えない境界線をこえて一人ひとりと向き合う。「その場かぎりで終わらない、より深くて本質に迫る情報発信を」


過疎化していく地域に暮らしながら活性化をはかる活動をおこなう「地域おこし協力隊」。その一員となった川上さんが、道東の弟子屈町(てしかがちょう)に移住したのは昨年のことです。活動期間は最長でおよそ2年半。弟子屈の人たちにとって、川上さんは「テレビの中の人」。そんな川上さんをはじめて目にした町民の反応は「取材だけじゃなくて、暮らすの?どうしてこんなところで?って、行く先々で驚かれました(笑)」。 地域おこし協力隊としてのはじめての仕事は、YouTube「弟子屈公式チャンネル」でのオープンしたてのパン屋の取材。川上さんの活動は過去もいまも変わらず、「いま・このとき・この場所」からの情報発信です。しかし、数人のスタッフと段取りを決め、カメラマンとともに現場に向かっていたこれまでとは違い、自分でカメラをまわしてインタビューを行うことは、川上さんにとって新鮮な経験の幕開けとなりました。

夢だったアナウンサーを辞め地域おこし協力隊へ。脱サラと転職の決断は、小さな違和感からはじまった


宮城県出身の川上さんは、15歳のときに東日本大震災を経験しました。以来、地域に貢献できる仕事がしたいと思うようになり、アナウンサーを志します。その夢を叶えた2018年、北海道胆振東部地震が起こりました。
被災地の取材を任された川上さんは、その取材を通じて、自分に求められる役割に違和感を覚えはじめます。「大変な事態に直面している方々の取材でも、ここは何分で!とか、ここは短めに!と、あらかじめ段取りを決めてコマ割りのように撮影していく。もちろん、それはより多くの情報を発信していくために必要なことなのですが、取材を終えたら、『はい、ここは終わり。次の現場』と、接する人々も光景も目まぐるしく変化していくことに、なにか埋められないズレのようなものを感じはじめたんです」。取材を終えた川上さんはその場を立ち去るだけで、残された人々の暮らしが変わることはありません。「困難に直面している人たちと一緒に考えて答えを出したり、その手助けができると考えて選んだ仕事だったんですが、なにか違うなって。そもそも僕がしたかったことって、これだったのかなって


2020年、全世界で新型コロナウイルスが猛威をふるう中で、「道東テレビ」と地域おこし協力隊募集


川上さんの違和感が将来を見すえた決意に変化したきっかけは、新型コロナウイルスでした。鈴木知事が北海道独自の緊急事態宣言を発動したとき、テレビ局でも人に近づくことがリスクとされて取材活動が大きく制限されました。「テレビ局のアナウンサーとしての限界を感じたんです。その立場でもできることはたくさんありますが、僕のしたいことじゃないとはっきりわかりました。小さな一歩でもいいから、次の行動に移すならいまかもしれないと決意しました」。 もともと地域おこし協力隊に興味はあったものの、当初の目的は違ったと川上さんは言います。「地域づくりを一から学ぶため、個人事業主として鎌倉で宿泊施設の運営をしようと考えていたので、そのように伝えて退職の意向を告げました」。自由な移動が制限される状況を逆手にとり、コロナ後を視野にいれた計画をコツコツと積み重ねていたとき、「道東テレビ」とのご縁もあり、地域おこし協力隊の募集を偶然知ることになります。「自分の経験を活かして情報発信をしながら、地域に貢献することもできる。やっぱりいいなと思い直して、計画を変更することにしました。出身は宮城ですが、縁のある北海道を離れるのは寂しいと思っていたし、お世話になってきた恩を返したいというのもあったので。やりたいことに一番近いことだと直感して、決めました

地域の人々とともに暮らし、飾らない素顔で情報を発信していく。弟子屈と世界をつなぐ架け橋となる「町公認アナウンサー」


地域おこし協力隊としての川上さんの正式な立場は「シティプロモーション活動支援員」。PR動画などを通じて弟子屈町の魅力を発信していく任務を担っています。YouTube「弟子屈公式チャンネル」は「道東テレビ」のサポートを受けており、町民たちの活動や情報を「ムーブ弟子屈」というシリーズで伝えています。また、川上さん自身もYouTubeにチャンネルをつくっており、弟子屈への思いや日々のこと、ご自身の活動などについて発信しています。「自分のチャンネルはゆるくやっていて、記録用というかほぼ日記です(笑)。でも、ラジオ感覚で聴いてくださる視聴者さんもいらっしゃるみたいで、楽しんでくれる方がいるのなら、このままのんびりとマイペースでやっていこうかなと」



町おこしの第一歩は、川湯温泉の復興。「熱意ある人々と目標を同じくしながら、自分にいまできることを精一杯行動していきたいんです」


摩周湖や屈斜路湖など、北海道ならではの壮大で美しい景色が楽しめる弟子屈町は、一年を通じて観光業が盛んな地域です。しかし、ここもまた新型コロナによる大きな打撃を受けました。地域おこし協力隊となった川上さんに、新たな目標となるきっかけを与えてくれたのが、川湯ホテルプラザ代表取締役の榎本竜太郎さんです。弟子屈の代表的な観光地・川湯温泉の観光客は年々減少傾向にあり、宿泊施設の廃業が相次いでいました。そんな中、榎本さんは地域を再生・再建すべく立ち上がり、廃業した旅館を買い取ったのです。収束のみえないコロナ禍での、榎本さんの大胆な決断。感銘を受けた川上さんはこの場所での「トーク番組」を企画し、YouTubeで配信しています。「コロナ禍以降、地域が再生していく様子を継続して発信していきたいという目標も生まれました」と川上さん。「町を盛り上げたいという人たちが多くて、刺激を受けます。僕も負けていられないなと(笑)

(仮)弟子屈でも生配信やってみます!ここからどうなる川湯温泉!

町の陰りを光に変えていく。移住者を視野にいれた「空き家リノベーション・プロジェクト」発足!


町公認アナウンサーとして弟子屈町の情報を発信するかたわら、川上さんは別のプロジェクトを発足し、携わっています。過疎化する地域の人口流出をふせぐためには、移住者を定着させなくてはいけません。しかし、こういった地域特有の問題があるのだと川上さんは話します。「実は、移住者が暮らせる賃貸住宅がないんです。弟子屈に興味を持ってくれる方はかなりいるのですが、そのことがネックになってほかの地域に流れてしまう。それを止めるため、空き家をリノベーションして運営していくプロジェクトをスタートさせています」。 2021年の夏からの運営を目標に、気軽に暮らせるシェアハウスや観光客用のゲストハウス、地元の人々のためのコワーキングスペースなど、幅広いリノベーションを町の民間業者とともに計画しているのだそう。「コロナの状況が今後どうなるのかはまだわかりませんが、その先を視野に入れて動いていきたい。動画を見たり、観光で来てくれた人たちが弟子屈を気に入ってくれて“ここで暮らしてみたい”と思えてもらえたとき、その居場所がなければ意味がありません。だから、いまから準備しておくことが大切なんです


地域おこし協力隊の活動を超えた、これからの展望。「弟子屈町の試みが波紋のように広がって、ほかの同じような地域の活力になっていけるように」


2021年3月、川上さんはNHK釧路放送局制作の「シン・クシロ対策本部」という番組にリモート出演しました。オクラホマのMCで進行するこの番組は、各分野のスペシャリスト達も参加し、地域に暮らしている人々の声を集めた釧路再生プランについて熱く楽しく議論する討論バラエティです。「リモート出演だったので、テレビですがなにか不思議な感じでした(笑)。でも、いい刺激をもらえました」。 地域おこし協力隊の一員であり、町公認アナウンサーでもある川上さんの活動は、少しずつ広がりはじめています。協力してくれる人たちも増える中、川上さんはさらにこの先のことも見すえていました。「政界も目標にあります」と川上さん。民間の力を強く後押しできるような政治家になることが、新たな挑戦のリストに含まれているのだそう。すべてはこの町、そして北海道の未来のため。川上さんがアナウンサーを志したときの目標が現実になり、それはさらに大きくなろうとしています。 川上さんの活動とともに弟子屈町もまた活性化していき、その試みがほかの地域へとつながっていく。そんな未来の輪郭が、いまはっきりと見えはじめています。

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