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#えぞ財団 連載企画「#この人、エーゾ」⑮ 上川町東京事務所・三谷航平さん ~町おこしのキーワードは「人とのつながり」~

#えぞ財団 連載企画「#この人、エーゾ」⑮ 上川町東京事務所・三谷航平さん ~町おこしのキーワードは「人とのつながり」~

えぞ財団 2022年5月12日

組織のなかで、マチのなかで、もがきながらも新たなチャレンジをしているひとを紹介する「この人、エーゾ」。今回ご紹介するのは、上川町役場東京事務所マネージャーの三谷航平さん。 三谷さんは、役場で観光や町おこしに携わったのをきっかけに、なんと町を飛び出し、東京へ。でもそれは町を思えばこその行動。「人とのつながり」をキーワードに、今も東京から上川町を盛り上げるべく、奔走しています。(ライター・光井友理)

三谷航平(みたに・こうへい):上川町役場東京事務所マネージャー。枝幸町出身。2012年上川町役場入庁。民間企業への出向を経て、現在は東京で上川町の地域振興に携わる。

役場入庁4年目、観光に携わることが大きな転機に。上川町の魅力を再認識


名峰大雪山、道内屈指の温泉地、層雲峡温泉を有する北海道上川町。
この町を本気で盛り上げようと、あえて町を離れて走り続ける三谷さんにお話を聞きました。
枝幸町出身の三谷さんは、旭川の高校、大学に進学し、上川町役場に入ります。「両親が公務員ということもあり、公務員になろうと思っていた。野球チームが強いという上川町役場なら仕事と趣味の時間が両立できるかなと思った」との考えから、入庁を決めたと話します。
はじめは企画総務課で広報誌の製作などを担当し、3年ほど広報関係の業務に携わりました。転機は4年目。観光庭園「大雪森のガーデン」を作るプロジェクト、北海道ガーデンショーなど、町主催のイベント関連の専門部署に配属されたことで「そこで初めて観光の分野に足を踏み入れました。そこから観光を軸とした町おこし、移住促進などにも携わるようになりました」と当時を振り返ります。それまではどちらかというと、町内で完結する仕事が多かった三谷さん。新しい環境で変わったのが外部の人たちと触れ合う機会が増えたことでした。「彼らと話すうち、上川町の良さに改めて気がついたんです」。


役場職員が地元を離れ東京へ!町長にプレゼンし、直談判


地域創生にもっと取り組みたい、もっといろんな人と関わってみたい――。そんな気持ちを強くした三谷さんが行きついたのは「一度北海道を離れて、東京に行きたい!との思いだった」と話します。
「もっと自分のスキルをうまく生かしてやれることはあるのでは」と思い、町長に直談判をしたそうです。「企画書を作り、僕が東京に行ったときの未来、上川町に残った時の未来をプレゼンしました。絶対行った方が町のためになるし、若い人にもどんどんそういうふうにしてほしいと思ったんです。そうすれば、町の魅力を伝えられる人がもっと増えるはずだ、と」。
そんな三谷さんの思いを聞いた町長は、二つ返事で「行ってこい」と後押ししてくれます。”立ち止まることが後退の一歩”との考えを持つという町長、そして、「役場の周りの人のサポートがあったからこそ実現できた」と三谷さんは振り返ります。

いざ東京へ!外部企業と生まれる相互作用と役場内部に起こる変化


こうして2019年から東京に出向し、最初は民間企業に勤めます。そして22年4月からは、上川町東京事務所のマネージャーとして、東京から上川町を元気にすべく活動しています。
仕事は主に町のPR、自らが中心となって町と包括連携協定を結んだ企業との窓口。「外から町に人や企業を連れてくるのをメインでやっています」。



上川町には上川大雪酒造が酒蔵を構えるほか、アウトドア用品のColumbiaが上川の自然の魅力を伝えるテレビ番組『Discover大雪』を町と共同制作したり、ニュースピックスと町の人たちが協力して社会課題を解決するプロジェクトを進めたりと、町おこしにつながりそうな企業と積極的に連携しています
」と説明してくれました。


”地域に外部のおもしろい人を連れてきて、相互作用を生む”という
三谷さんの取り組みは、役場の若手職員にも変化をもたらしているようです。
「行政は縦割りの傾向がありますが、組織横断のようなかたちで、連携企業との打ち合わせに役場のメンバーにも参加してもらっています」。それによって、「若手が自分の意見を言えるようになってきていると感じます。意見を言わなくても進んでいくことも多い役場の会議とは違い、民間企業の会議は、極端に言うと、黙っているなら出なくていいよ、という感じ。そうした場に参加することで、明らかに変わってきている若手たちがいるのが、変化の実感としてあります」と目を細めます。


行政サービスにもいい影響がありそうで、「決められたマニュアル通りのサービスではなく、住民が何を求めているかを考えて、本当に行き届いたサービスを一人一人が考えられるようになる一歩になるのではと思っています」と期待します。

大都会東京にいる今、感じる地方の可能性。「いかにがむしゃらで走り続けられるか」


東京で仕事をし、東京ならではの刺激も日々受けている三谷さんですが、こう話します。「経済の豊かさと、人の心の豊かさは比例しないと思っています。人が豊かになるというのは、物理的なものがたくさんあるとか、お金がたくさんもらえるとかだけでなく、自分の役割が果たせたり、自分がここにいる価値が見いだせたりすることが一番大事かなと。そういう意味での豊かな社会を作っていけたらいいですね。連携企業が町の魅力を再発見してくれたり、こういう事業をしたらどうかというアドバイスをくれたりすることで、逆輸入的に新しいことが起きたりして、地域の若い世代ががんばることで、地域の豊かさが生まれてくるのではないでしょうか」


また、地方創生に取り組むほかの自治体へのアドバイスを聞いてみると、「答えではないかもしれないけれど、あまり数字にこだわりすぎない方がいいかなと思います、何をやるにしても。観光客が何人きた、税金がどれだけ増えた、だけでなく、質を考えた方がいいと思います。層雲峡には年間180万人ほど来ていただいていますが、実はリピーターが少ないんです。質のいい観光を追求しないと、何度も来たくなるような目的地にはならない。目先のお金を使って目先のお客さんに来てもらうだけでは、緩やかに衰退してしまう。だから、大がかりなキャンペーンを打つよりも、若手が外部の人と接するときにしっかり発信できる力をつけられるようにすることが、長い目で見れば大事かなと感じます。あとは、いかに熱量を持ち続けられるかが大事。いかにがむしゃらに走り続けられるか、というのは、意外と役場職員には足りないかもしれないですね」と語ってくれました。

地元を第一に考える「何をやるにしても、町の人たちが考える余白をつくることが大事」



三谷さんがそれほどの熱量を持ち続けられるモチベーションは何なのでしょうか?「僕自身は何ができるというわけではないので、周りの人に恵まれているなと思います。周りにいる人が、僕のアイディアをいいんじゃないと言ってくれたら、走れる気がするんです。一人でも味方になってくれる人がいれば、その人と一緒に走り続けられるかな、と僕は思います」と説明してくれました。
上川町役場入庁後から順風満帆に見える三谷さんですが、失敗もあったそうです。「東京に行ってから、とにかくがむしゃらにいろんな外部の方を町に招いた時期があったのですが、すべての人が町の人に受け入れられたわけではなくて。トライアンドエラーで、エラーの方が多いくらいかも」と苦笑します。当時は、外部の人の視点を入れて、町の人たちの刺激になればいいと思ったものの、「すごい人だから言うことを聞いた方がいいよ、と一方的に言っているような印象を与えてしまったようです」と振り返ります。「地域の人たちが考える余白がなく、言っていることだけをやればいいんでしょ、という感じになると、絶対にうまくいかないなと気づきました」。
そんな失敗を経て、「何をやるにしても、町の人たちが考える余白をつくることが大事」との思いに至り、町の人たちの気持ちを置き去りにしないことを第一に考えるようになったそうです。

東京にいることによる”葛藤”の解決法は「地道に会話を続けること」


2019年からは移住の取り組みもはじめ、今は10人以上が地域おこし協力隊として町に住んでいるそうです。希望者には企画書を出してもらい、やりたいことを明確に持っている人に来てもらっているからか、そのまま住み続ける人も多いとのこと。起業したりカフェを開業したり、観光協会に勤めたり、「それぞれ居場所や挑戦の場を見つけて奮闘している人も多くいるのが頼もしい」と手ごたえを感じています。北海道だけでなく、全国の自治体ががんばっている「町おこし」とは、何をもって成功といえるのか?と質問を投げかけてみました。
「難しい質問ですが、一人ひとりが意見をもって、それが反映されるような町がよい町だと思います。東京のような大きな町にいると、自分が社会に対して何ができているかわからなくなることがあるんですよね。町づくりに大事なのは、自分が何をしているかが役割として見えていて、それがちゃんとかたちになっているのが見えることが大切かなと思います。それができているのが成功している町かな。移住してくる人たちも、それを重視してくる人もいるように感じます」


さらに自己分析も含め、三谷さん自身の周りからの見え方については、「僕自身も東京にいることで、上川町の人からしたら、半分外の人間になっているんです、おそらく。外から内部を応援するのは難しいなといつも思います」と自分自身の葛藤はあるという上で、「地道に会話を続けていくしかないな」と悩みながらも、持ち前のコミュニケーション力で乗り越えるべく日々仕事に邁進していると話します。

今はまだ夜明け前か?「どんな町でも、町をつくる人々が一番の財産」



北海道外の読者向けにと思い、上川町の魅力について尋ねると、「前を向いて進もうという人が多いような気がします」と三谷さん。大自然や温泉の前に、町の人々が一番に出てくるなんて。何より町の魅力が伝わる一言だと感じました。「先日サツドラHD社長の富山浩樹さんが上川町を訪れて町内の人々と話したときも、一つも後ろ向きな話がでなかった」と驚いていました。「どんな町でも、町をつくる人々が一番の財産」。上川町の明るい未来が見えてくるような言葉です。大雪山国立公園もあり、層雲峡温泉もあり、観光コンテンツも豊富な上川町。ですが、「その分、それに胡坐をかいていた部分もなくはなかったと思います。今はそれを変えていこうとしているところ。正直まだ夜明け前かもしれない、変わり切れていないところもあるかと」。三谷さんと上川町の挑戦は、まだまだ続きそう。今後の展開が楽しみです。

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