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【#えぞ財団】連載企画「#この人、エーゾ」㉑株式会社イトイグループホールディングス・菅原大介さん ~人生ってめちゃ難しいけど、帰りたいなと思うまちづくりを。とにかく「楽しい地元にしたい!」~

【#えぞ財団】連載企画「#この人、エーゾ」㉑株式会社イトイグループホールディングス・菅原大介さん ~人生ってめちゃ難しいけど、帰りたいなと思うまちづくりを。とにかく「楽しい地元にしたい!」~

えぞ財団 2022年10月28日

もがきながらも新たなチャレンジをしているひとを紹介する「この人、エーゾ」。今回ご紹介するのは、菅原大介さん。士別市朝日町にある株式会社イトイグループホールディングスで、土木建築業を基盤として、介護・再生エネルギー・スポーツチーム・クラフトビール・キャンピングカーなど様々な事業を現在展開する菅原さんの目標は「楽しい地元にしたい!」です。

菅原大介:イトイグループホールディングス代表取締役、士別サムライブレイズ球団代表。1978年士別市(当時の朝日町)に生まれ、大学卒業後イトイ産業に入社。2018年にイトイ産業も含むイトイグループホールディングスを設立、代表取締役に就任、現在に至る。趣味は、旅行、映画鑑賞、テレビゲーム。

イトイの全体像、土木建築から多角化へ


旭川から一時間ほど北上した士別市朝日町に株式会社イトイグループホールディングス(GHD)はあります。もともとは朝日町でしたが、人口減少もあり2005年には配置分合による合併が行われ士別市となりました。現在人口は1000人ほどの小さな町で菅原さんは、土木建築業の長男として誕生しました。イトイGHDは現在、グループ・関連企業9社を数え、かねてからの基軸事業である「土木事業」「建築事業」に加え、「介護」「飲食」、流木をリサイクルする「地域再生エナジー」、車両メンテナンス販売の「カードック」、「クラフトビール」「野球独立リーグ球団の運営」「eスポーツ・イベント」など多種多様な事業を展開しています。
「私はこの士別市朝日町という田舎だからこそ”地方創生企業”として社会の一部でありたいと思います。これまで数十年の間、公共事業などを中心とする土木建築業『BtoB』事業を主にやってきましたが、現在は『BtoC』事業にも注力し、多角化経営を進めています。地方であることを逆手にとってどんどん地元の魅力をよりダイレクトに発信できる企業にしたいと考えています」と話してくれました。


大学に8年通う!?メンパもスカウトもやり稼ぎまくって遊びつくした学生時代


菅原さんは高校時代、大学進学を決める際に国語や読書が好きだったため、小説家を目指してみたいと考えていました。理系はとても苦手で、国語は大好きで、センター試験でも満点を取るくらいでした。進学は文学部がある大学に行きたいと考えていましたが、父の反対があったと話します。「僕の親父は土建屋の2代目でした。母の実家の稼業を継ぐ形でしたから、親父自身は専門的なことをそれまで学んだわけではなく、技術的にも苦労していたんだと思います。親父からは自分のつらい経験もあり、3代目を継いでほしいので、できれば工業大学に行ってほしいと言われ、文学部神学は反対されました。その時は全く実家稼業を継ぐ気はありませんでしたが、親父の気迫に押され、東北工業大学に進学しました。そこからまさか8年も大学に通うとは…(笑)
仙台に一人暮らしすることになった菅原さんは、若さもあり、完全に遊びに走ってしまい、学校へは行かなくなってしまいました。2年間一度も学校へ行かず、夜の街に立ってスカウトをやったり、メンズパブで働いたこともありました。持ち前のコミュニケーション能力で人気になり、結構稼いでいたときもあったと話します。「とにかく遊びまくりました。将来のことなんて一切考えず、どうにかなるだろうと思ってました。もちろん実家を継ごうなんてことは一切考えてませんでした(笑)大学6年生くらいになると、もう知っている友達がいないどころか、結婚式に呼ばれたりするんですね。そうこうしている間に、教授に呼ばれて『菅原、大学は永遠にいられないんだ。8年で卒業しなければいけないんだぞ?』と言われて正直焦りまくりました。そこから無我夢中で単位を取り、勉強をしてっていう毎日が続いたんですが、おのずと一人の時間が出来てかなり自分を見つめなおす時間が出来たんです」と当時を振り返ります。




周りは卒業、就職。いつも思い出すのは地元のこと。父は反対も半ば強引に朝日町に帰る。


周りはみんな卒業し、一人でいる時間が増えた菅原さんがいつも思い出すのは地元、朝日町のことでした。子どもの時から”大ちゃん、大ちゃん”といって息子や孫のように可愛がってくれた朝日町のご近所さん達。田んぼを泳いだり、雪で遊んだり、近所のおうちでご飯を食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり。当時商工会青年部だったお父さんも、忙しい仕事の合間を縫って、町内会のお祭りで子供たちを楽しませるために企画や作業をしていたことも思い出し、菅原さんの心境にも変化が生まれました。「こんだけ散々遊んだし、地元に恩返ししよう。都会も好きだけど朝日町はもっと好きだ。そう思って、親父に『朝日町に帰って一緒に仕事するよ』と伝えたんです。でも、全く予想もしなかった『帰ってくるな』という答えだったんです。実は当時、会社は売り上げが落ち込んでいて、仕事がなかったのです。親父は会社を潰してしまう覚悟をしていたと思います。どうにか、俺が力になるからと説得し、半ば強引に朝日町に帰ることにしました



存続さえ危ぶまれた会社、無我夢中で働く日々のなか”地方創生企業”を考えるように


地元に帰り父と働くことになった菅原さんですが、人口減少あり朝日町が士別市に合併になった2005年、会社の売り上げ規模はおよそ1.7億円で現場作業員3人ほどで、それまでの会社の内部留保もなく、会社の存続が危ぶまれるほどでした。「とにかく無我夢中で働きまくりました。大学時代遊んでいたのがウソかのような毎日でした。当時は、週休1日制で日曜日しか休みがなかったですし、最初のころはそもそも作業に体が慣れていないのでつらい日々でした。必死に現場でもがく中で感じたのは、公共事業に依存している会社は予算が大きく影響するため事業が安定しないところがリスクでした。ただ、公共事業が収益の主体だったからこそ、地域還元は企業として手厚くしていくべきだとも考えました。その地域還元も単発的な寄付などではなく、職や事業を地域に作ることでヒトが集まり、結果、地域の人に喜んでもらう仕組みを作りたかった。当時のこの考えが今まさに体現している”地方創生企業”の礎になったと思います




転機の東日本大震災、職人として復興事業に携わるため宮城県に戻る


会社と菅原さんにとって大きな転機となったのは、2011年の東日本大震災でした。大学時代8年間も過ごした宮城県が被災地となり、2012年に今度は学生としてではなく復興工事を行う職人として宮城県に住み込むというものでした。きっかけは、卒業まで8年を費やした大学時代のOBの紹介でした。「結婚もして子供が一歳のタイミングでした。当然、家族と離れての単身赴任生活は大変なのはわかっていましたが妻も応援してくれました。遊びまくっていた大学時代の先輩のつながりでの大きな仕事、そして楽しい思い出がいっぱい詰まっている東北に少しでも貢献したいと思って現地に入ったのを今でも鮮明に覚えています
一年数か月、東北の復興事業に携わり、会社としてもイトイ産業東北支店を作り、現在も会社の柱として機能しています。無我夢中で仕事をした数年間を経て、2013年で売上は菅原さんが入社当初の約5倍の9億円くらいにっていました。このころは常務取締役として入札や現場を行き来する毎日でした。「このころは初めて自分は何を目的に経営者になるんだろう?と考えだしました。高齢化が進み人口減少する朝日町の会社の目的は何だろうと考えて”ビッグでもストロングでもなく、グッドな会社を作りたい!”と思って、2013年に「グッド!」イトイ=人人人として、1人目は「社員」、2人目は「発注者や取引先」、3人目は「地域住民」のスローガンを掲げ、多角化経営もにらんでHD化を進め、大学の時考えていた『楽しい地元にしたい!』の実現に向けて気合を入れなおしました」と話してくれました。

スポーツの地域格差をなくす!社員、士別サムライブレイズやスキージャンプチームと作る未来


現在菅原さんが取り組むプロジェクトの一つとして、独立リーグ所属の野球チーム”士別サムライブレイズ”の運営と、”朝日スポーツクラブ”のコミュニティー化があります。スポーツにおける地域格差や教育格差(運動能力や機会)をなくしたいと思って始まったこちらのプロジェクト。士別サムライブレイズは最北の野球独立リーグ北海道ベースボールリーグに所属し、今回リーグ優勝を果たしました。「これまでも2018年にスキージャンプチームが出来、仕事と競技の両立を選手たちはできていた。このスキーチーム運営のノウハウを野球にも生かしつつ、長年の田舎としての課題である使われていない資産(空き家、グラウンド)を選手やスタッフの移住定住に活かせたらという考えがありました。おかげさまで、関係者30人ほどがシーズン中、この朝日町に住んでくれて、地元のみんなからは”アイドル、恋人、孫”として本当に注目してもらっている。中には、野球はやめても定住し、地元で働いてくれている人もいて本当にうれしいです」
また、朝日スポーツクラブではイトイGHDの社員が中心となって運営し定期的に様々なスポーツの体験会や教室を行っています。中でも野球に関しては少人数でなくなってしまった少年野球チームを復活させようと、”士別サムライブレイズJr”を結成し、現在は20人以上在籍しています。この秋の新人戦で優勝し、大人の士別サムライブレイズをきっかけとしてコミュニティーが形成されています。「全部のスポーツの全種目とはなかなかいかないかもしれませんが、『朝日町にいたからこのスポーツにチャレンジできなかった』という子供たちをなくしていきたい。むしろ朝日町出身の子たちは、活発でスポーツが大好きだね!と言われるような未来を作りたいと思っています」と語ってくれました。


クラフトビール製造も!地元の美味しい水を活用した士別サムライブルワリーを北海道、世界へ


昨年からは、”士別サムライブルワリー”を立ち上げ、クラフトビールにもチャレンジしています。こちらも苦労の連続で、酒税法や醸造法などすべてが全くの素人だったため、それぞれの専門家探しや勉強の日々でした。「朝日町は天塩川の源流なため綺麗な水を使った製品を作りたいとはずっと思っていた。自分が一番モチベーションを保てるのはビールだったのもあります(笑)。現在までに8種類を製造し、クラウドファンディングを呼び掛けたところ500万円も応援してもらい、道の駅や地元スーパーも含め、月平均2000本くらい販売できていて、1年目から黒字化に成功しているんです。正直こんなに美味しくできたことと、事業もうまくいっていることにダブルでびっくりてます」と話します。
地元の水を活用して良い商品を作って、雇用を生んで地元をPRする。ビールに限らず地域のものを活用して、士別市朝日町の存在を北海道から世界へ届けたいと思います


時代をとらえたキャンピングカーブランド「全力自動車」田舎の職人同氏がシナジーを生む


こちらも昨年発表したキャンピングカーブランド”全力自動車”では、関連会社の”住宅メーカー”と”車の販売修理”の職人がコラボして、低価格ながらも楽しめるキャンピングカーを作ろうとプロジェクトがスタートし、現在は販売生産に至っています。「予想以上の大反響でした。コロナの影響もあり、アウトドア志向やワーケーションにフィットしました。そもそもは、コロナ渦で、実現できるかはさておき、社員で楽しそうなプロジェクトを考えてみようというところからスタートしました。田舎の関連会社同士でこんなシナジーが生まれ、低価格が実現できたので家族単位、夫婦単位と様々な人たちにちょっとでもよいから大自然を楽しんでほしいと思っています。ビジネス面からいうと、繁忙期と閑散期の差に大きなギャップがある住宅部門と車部門のベースアップになるような事業をと考えいたので本当によかったです」と話します。現在も、全力自動車は多くのメディアにも取り上げられこれまでアウトドア志向ではなかった女性層や家族層からも注目されています。

北海道の大自然に囲まれた会社がキャンピングカーを全力でつくりました。
https://youtu.be/WY48XVF8dwg?si=uap7cMtlR7FQlCqo

大自然のスキー場×温泉を魅力化!田舎だからこその付加価値と体験に現在取り組む


現在進行形で取り組んでいるのが”スキー場×温泉事業”です。士別市内にある日向温泉には隣接してスキー場があります。会社としては、指定管理施設として市から委託を受けていますが、この魅力的な大自然におけるスキー場と温泉施設を活用してどのようにビジネスを軌道に乗せて、士別市の魅力化につなげるかということをまさに模索している最中でした。「夏のグリーンシーズンのスキー場の活用を市には提案していきたいと考えています。ここでしか体験できない体験、例えばバギーやサイクリングコースを作ったアクティビティーだったり、キャンプ施設の拡充など、この田舎だからこそできる体験に付加価値を出して提案したいと思っています。例えば、全力自動車に乗ったご家族が、日向温泉にキャンプして、日中はアクティビティーで楽しみ、サウナや温泉で汗を流し、夜はクラフトビールで乾杯。そんな風になったら最高だなと思ってます」と目を細めます。

人生ってめちゃ難しいけど、帰りたいなと思うまちづくりを。とにかく「楽しい地元にしたい!」


全く建築土木に興味がなく、遊びまくった学生時代を経て、決して安定していたとは言えない実家稼業を父や社員と立て直し、多角化経営を実現している菅原さん。「最初の10年くらいは本当に厳しかったです。でも周りの協力もあり乗り越えたうえで、これまではずっと種をまいてきました。企業としての多角化経営としては土木建築部門のイトイ産業がしっかりと幹を担ってくれるので比較的安定はしているとおもいます。ただ、新規ビジネスに関してはすべてやるわけではなく、実現したものも3年くらいでシビアに切るということも考えなければいけません。田舎の企業だからこそ、市外の先進的企業、個人とコラボして、士別市朝日町に来てもらうということは本当に大事だと考えています。課題である、雇用や格差、インフラなどあらゆることを、地域の理解を得ながら、解決に向かうというのは本当に難しいと思っています。すべては、自分がそうだったように、地元での幼少期の経験や想い出は人生にとって大きい影響を与えるなと思いますし、都会に出たらいろいろなこともあります。人生ってめちゃ難しいけど、帰りたいなと思うまちづくりを支えたいと思う。今後の地域はさらに厳しさが増すと思います。人がいなくなって産業がなくなる。担い手も消費者も同時に速いスピードでいなくなる。まずは、雇用の場を作って、やりたくない仕事をやるのではなく、多様性に富んでいて、やりたかったり興味がある仕事を提供できて、楽しい地元にしていきたいと思います。士別市朝日町としては田舎を逆手にとって、魅力として打ち出したい。会社としては面白くて存在感のあるグループにしていきたい。とにかく『楽しい地元にしたい!』。みなさん、士別市に遊びに来てくださいね






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