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- 【#えぞ財団】連載企画「#この人、エーゾ」㉖アイビック食品代表取締役・牧野克彦さん~「次の100年に向けた事業」ボールパーク近くにアウトドア体験型複合施設を開業。もっと北海道の魅力を食を通じて伝えれるようにチャレンジ~

【#えぞ財団】連載企画「#この人、エーゾ」㉖アイビック食品代表取締役・牧野克彦さん~「次の100年に向けた事業」ボールパーク近くにアウトドア体験型複合施設を開業。もっと北海道の魅力を食を通じて伝えれるようにチャレンジ~
えぞ財団
2023年2月14日
組織のなかで、マチのなかで、もがきながらも新たなチャレンジをしているひとを紹介する「この人、エーゾ」。今回は、アイビック食品代表取締役の牧野克彦さんをご紹介します。
目次
- 北海道の食のDX拠点「GOKAN~北海道みらいキッチン~」やアウトドア飯ブランド「DELBE」と時代をとらえるアイビック食品。15歳の誕生日に実印がプレゼントされた!?
- 東芝コンシューママーケティングで見た”地方の中小企業の栄枯盛衰”。担当企業の倒産や出店ラッシュを経験
- 脱サラし、アイビック食品に。釣具部門に助けられまくっている小さな会社からのスタート
- 平社員からのスタート、無我夢中で働きまくる中で経験した成功体験。ついに大口顧客獲得!
- 同世代の経営者に刺激を受けた経営塾。「目標をもっと広く!高く!北海道のために本気で考えよう!」
- アイビック食品のアジア進出、多角化展開へ。”エリア展開・新時代ビジネス・伝統継承”
- 本社に”GOKAN~北海道みらいキッチン~”を開設。新ブランドアウトドア飯新ブランド”DELBE”も好調!
- 「次の100年に向けた事業」ボールパーク近くにアウトドア体験型複合施設を開業。もっと北海道の魅力を食を通じて伝えれるようにチャレンジ
牧野克彦:アイビック食品代表取締役。1977年札幌出身。2001年東芝コンシューママーケティング株式会社、2008年にアイビック食品に入社、2020年に代表取締役社長就任。趣味は、川釣り、ゴルフ。
北海道の食のDX拠点「GOKAN~北海道みらいキッチン~」やアウトドア飯ブランド「DELBE」と時代をとらえるアイビック食品。15歳の誕生日に実印がプレゼントされた!?
札幌市でたれ・だし・スープのメーカーとして伝統を守りつつ、現在は”北海道の食のDX拠点”を目指すべく食に関わる全ての人・企業・地域のHUBとなる施設として”GOKAN~北海道みらいキッチン~”の開設や、”北海道の青空メシを、ちょっと贅沢に。”をモットーにアウトドアシーンと食の融合をはかる新ブランド“DELBE(デルベ)”などすさまじい勢いで時代にフィットした戦略を繰り出すアイビック食品。代表取締役社長の牧野さんは「お客様が喜ぶこと、会社のプラスになること、良いと思うことは何でもチャレンジしてきた」と振り返ります。
牧野さんの実家は、創業1922年(大正11年)創業で、現在は札幌市が本社の釣具卸売を営む株式会社アイビックです。姉、兄、牧野さんの3兄弟の末っ子として育った牧野さんには幼少期から忘れられないエピソードがあります。
「今でも忘れられないというか、衝撃的だったのは、僕が15歳の誕生日の事でした。株式会社アイビックの社長だった父親が誕生日プレゼントに実印をくれたのです。15歳の息子の誕生日に実印ですよ(笑)『え?どういうこと?』ってなったのを今でも覚えています。それからすぐに区役所行って、実印登録して、父が経営していたアイビック本社で、様々な書類に印鑑を押していったんです。今考えるといろいろな重要書類がありましたし、その中には株式会社アイビックの後継ぎは長男の兄にすると明記されている書類もありました。15歳にとっては衝撃ですよね(笑)。高校に進学する際に関しても学費は義務教育課程までで、それ以降の学費は、親から私への貸付金というかたちになりました。しかも1%の利息まで…そうして私は高校や大学卒業した時にはすでに親から自身への貸付金がある状態だったんです。なかなか普通の家庭では考えられないですよね」と話します。
「今でも忘れられないというか、衝撃的だったのは、僕が15歳の誕生日の事でした。株式会社アイビックの社長だった父親が誕生日プレゼントに実印をくれたのです。15歳の息子の誕生日に実印ですよ(笑)『え?どういうこと?』ってなったのを今でも覚えています。それからすぐに区役所行って、実印登録して、父が経営していたアイビック本社で、様々な書類に印鑑を押していったんです。今考えるといろいろな重要書類がありましたし、その中には株式会社アイビックの後継ぎは長男の兄にすると明記されている書類もありました。15歳にとっては衝撃ですよね(笑)。高校に進学する際に関しても学費は義務教育課程までで、それ以降の学費は、親から私への貸付金というかたちになりました。しかも1%の利息まで…そうして私は高校や大学卒業した時にはすでに親から自身への貸付金がある状態だったんです。なかなか普通の家庭では考えられないですよね」と話します。
東芝コンシューママーケティングで見た”地方の中小企業の栄枯盛衰”。担当企業の倒産や出店ラッシュを経験
高い身長を生かし学生時代は日々バレーボールに打ち込み、高校を卒業後は関東の大学に進学。就職活動の時期を迎えた牧野さんは、就職氷河期の厳しい時期ではありましたが、東芝コンシューママーケティング株式会社に入社しました。「家業を継ぐ気もないし、戻るつもりもありませんでした。東芝に入社した当時は、この会社で一生頑張ろうと思っていました。地元の北海道に勤務地希望を出して、国内家電事業部に入り、当時、地元北海道で唯一の大型家電量販店であった家電量販店Aの担当を任されました。気合も入っていましたし成績を残すことも出来ました。その中で貴重な経験しました。私が担当していた家電量販店Aが倒産したんです。『地元北海道では知らない人がいないくらい有名な家電量販店Aが倒産…担当は自分。なにが起こっているんだ』と考えている時間もなく、対応に追われました。今振り返ると、その当時道外に本社を構える全国大手の家電量販店が北海道に進出してきたタイミングでもあり、”地方の中小企業の栄枯盛衰”を目の当たりにしました。その次に道外が本社のロードサイド型大手家電量販店Bの担当になりました。家電量販店Bは北海道に出店ラッシュの真っただ中。凄まじいスピードで成長し、ついには家電業界ナンバーワンになりました。ここで経験を詰んだ私は、次に当時”花形”と言われる札幌駅前の都心型大型店の家電量販店Cを任されていました。家電やパソコン販売の超最前線、「私が担当していた時は対前年同時間の売上管理をしていて、時間毎でレイアウトを入れ替えるくらい。流通のスピード感や小売の厳しい競争を学びました」と話してくれました。
脱サラし、アイビック食品に。釣具部門に助けられまくっている小さな会社からのスタート
サラリーマンとして様々な経験をしつつ、東芝での成績を着実に上げていた2008年頃、牧野さんは突然、父から会社を見に来いと言われました。当時釣具の卸売をメインとする株式会社アイビックのグループ企業として、2002年にアイビック食品株式会社は法人設立し、小規模ながらラーメンたれなどを製造する食品事業が始まっていました。「創業の2002年から2008年の約7年間で2億ほどの売り上げになっていたアイビック食品をやってみないか?」と父に打診されたのです。牧野さんは「15歳の時に家業は継がないという契約書もありましたし、東芝のサラリーマンとしては北海道で一番早く主任職になっており、まだまだ出世していきたいと思っていたタイミングだったので、正直葛藤はありました」と当時を振り返ります。父からは「俺が30歳のとき、釣具の卸売のアイビックは売上3億だったが、50億まで伸ばしてきた。お前も会社をデカくしてみろ」と言われ、やってやろう!と思い、サラリーマンを辞め、アイビック食品に入社しました。いざアイビック食品に入ってみると現実が次々と突き付けられました。「当時のアイビック食品は釣具の卸売であるアイビックに助けられっぱなしの会社だったのです。お荷物会社というのは言い過ぎかもしれませんが、かなりきつい立場でしたし、身内からの見られ方も辛辣であったのは間違いありません。そのほかに制服や社内の机やいすなどの備品は、アイビックの使い古しを使っていました。これは思った以上に大変だなと思ったのを今でも鮮明に覚えてます」
平社員からのスタート、無我夢中で働きまくる中で経験した成功体験。ついに大口顧客獲得!
アイビック食品では、一からのスタート。現場を走り回る日々が続きました。「社長の息子だからとかそんなのは関係ない。正真正銘役職なしの1年目平社員で入社しました。最初は東芝での経験もあったので営業で戻ってきました。営業とは言いますが、自分のロッカーの中には常に工場着や作業着が入っており、午前中の工場作業や配達を終えて、午後から営業に回る日々、今考えたら無我夢中で働きまくりましたね(笑)」と当時を振り返ります。
当時アイビック食品は自社のオリジナル商品は少なく、主にラーメンや鍋のたれなどのOEM商品を製造をしていました。さらに販路拡大やクライアントの獲得など、ビジネスを拡大するべきだと考えていた牧野さんは営業に奔走する中である大きな成功体験をします。「ラーメンや鍋のたれの製造だけではなく、もっと幅広いモノづくりをしたいと思っている中で、大きな契約を取ることができたのです。多店舗展開するカレー専門店との契約です。業務用カレールーを製造することになり、およそ5000万の大口顧客でした。とても嬉しかったのを覚えていますし、会社にとっても大きな柱になりました。サラリーマン時代の営業経験を活かしつつ無我夢中に営業し続け、足を運び続けた結果だと思います。当時の私にとっても良い成功体験でした」
同世代の経営者に刺激を受けた経営塾。「目標をもっと広く!高く!北海道のために本気で考えよう!」
そんながむしゃらに働いた営業時代を振り返る中で大きなターニングポイントになったのが北海道銀行グループによる”道銀経営塾”でした。「当時北海道銀行の頭取だった堰八義博さんが道内若手経営者の育成やつながりにもっと注力しようとのことで、家業を継ぐ後継者を対象に開講されました。私が参加することになり、とてもいい機会になった。例えば2009年、現サツドラHD株式会社の富山さんはじめ同年代に会うことが出来たのですが、売上規模の違いや目指すスケールに圧倒されましたね。正直、同年代なのにすごく遠い存在に感じていて輝いて見えました。この会社たちに少しでも近づいてみたい、北海道のためにもっと働きたいと思った。自分の小ささや現実を肌で感じました。それから、2016年の北海道経営未来塾第1期への参加。そこには北海道を代表する各業界・有名企業の現役トップたち。私は売上を6億円から10億円へと伸ばしていた時で、慢心ではありませんが自信を得ていました。ここに参加していなかったら10億円達成で終わっていたと思いますが、まだまだ上のステージがあることを強烈に感じました。他にも札幌JCや法人会、YEGなどにも所属し、異業種の先輩経営者からより多くを学び、見る視点や目標をもっと広く、高く、そして北海道のために何ができるか本気で考えよう!と思う大きなきっかけになりました」と話してくれました。
アイビック食品のアジア進出、多角化展開へ。”エリア展開・新時代ビジネス・伝統継承”
その後もアイビック食品の売上は順調に伸び、数年前には釣具のアイビックに”助けてもらっている会社”から脱却することができました。2018年に総菜開発株式会社のM&A、2019年は合弁会社で中国工場建設、2020年には業務提携によるタイ工場の国際進出、このほかにも異業種との資本提携などビジネスを多角化展開してきました。「世界的に見ても素晴らしい北海道の素材を活かして付加価値をつけ、北海道の魅力を発信する会社として輝きたいと思っています。そして、これからもリスクを恐れず攻める姿勢は変わりません。実は去年は株式会社アイビックが創業100周年、アイビック食品株式会社は法人設立20周年の節目の年でした。新たな気持ちで、卸売業だけだった釣具も小売業への挑戦をしています。さらにグループ連携事業として、2021年にスノーピーク、ティムコ、アイビックの3社とともにキャンパーズアンドアングラーズという合弁会社を設立しました。北海道の大自然と食の素材宝庫を活かして、フィッシングと食の融合に加えて、アウトドア分野にも参入。この取組でアイビック食品は、スイーツや飲食事業にもチャレンジします。
そして、今後の展望は”エリアの展開”です。道外の生産拠点や販路拡大、広くは海外までさらに進出してきたいと思っています。これを軸にしつつ、食とテクノロジーの融合や代替食品、グローバル食品(ハラル、ベジタリアン対応)、フードロス事業など新時代でのビジネスにチャレンジしていきたいと思っています。この他に、後継者不足などで事業を辞めざるを得ない食堂など地元の味や伝統を絶やさないため、商品化やM&Aをして、北海道の食文化を守りたいと思っています」
本社に”GOKAN~北海道みらいキッチン~”を開設。新ブランドアウトドア飯新ブランド”DELBE”も好調!
2021年には、会社内に”北海道の食のDX拠点”となるべく“GOKAN~北海道みらいキッチン~”を開設しました。「GOKAN」は、北海道の食のDX拠点として、お客様の商品開発や販売を後方支援する施設で、キッチンスタジオ、デジタルサイネージ、プロジェクションマッピング、アロマシューター(香り発生装置)、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)など、様々な設備を有し、文字通り五感で「食」を感じることができる拠点です。商品開発の打ち合わせや、料理撮影、試食会、イベントなどさまざまに利用していただけるほか、商品の見せ方・売り方などの成功事例の創出にも取り組んでいます。調理機材や撮影機材の常設はもちろんのこと、VR、アロマシューター(香り発生装置)、高性能スピーカーなど正に五感で食の魅力を研究するための施設です。「もちろんシェフや職人さんの”感覚”は大切でリスペクトします。我々としてはこのプロフェッショナルの味をどう表現するか?どう守り抜くか?どう伝えるか?のプロフェッショナルとして、徹底追及しようという思いのもとGOKAN開設に至りました。未来への大きな投資だと思っています。いろいろな人に使ってほしいです」と語ってくれました。
この他、2022年にはアウトドアシーン向けの新ブランド・アウトドア飯ブランド“DELBE(デルベ)”を発表しました。コロナ渦によるキャンプやアウトドアシーンの盛り上がりを捉えつつ、北海道の食の魅力も同時に伝えたいという狙いです。
「コロナ渦で外出制限が設けられ、外食需要は減ってしまっている中、北海道のアウトドアシーンが注目されました。私たちの会社では何ができるだろう?ということを考えに考えて、”北海道の青空メシを、ちょっと贅沢に。”をコンセプトに据え、メスティン(アルミ製の箱型の飯ごう/アウトドア調理器具)というギアに寄せた商品開発や、”どんなときもカレー”という様々なシーンで多種多様な味をその時の気分で選べるレトルトカレーシリーズ、スパイスなどを発表・販売しました。短期間で人気ブランドとなり、売上も好調です。そして何より私も社員も楽しみながらできているのが最高ですね!」
「次の100年に向けた事業」ボールパーク近くにアウトドア体験型複合施設を開業。もっと北海道の魅力を食を通じて伝えれるようにチャレンジ
また1月31日にはスノーピークやティムコ、アイビックとともに設立した株式会社キャンパーズアンドアングラーズが、北海道日本ハムファイターズのボールパーク「北海道ボールパークFビレッジ」の南側に、釣りやキャンプ、買い物、飲食ができるアウトドア体験型複合施設を今秋にも開業することを発表しました。「新しいアウトドアカルチャーをここ北海道で作りたいと考えたのが始まりでした。アイビックグループとしてみたときに、釣具のアイビック、食品調味料製造業のアイビック食品、それぞれ別のベクトルだと思っていた企業が、スノーピーク山井会長の助言あり、同じベクトルに向かって進み始めました。次の100年へ向けグループ連携事業としても肝入りでやっていきたいと思っています。森や川の自然もありながら、都市型で物販型と体験型で探していたところぴったりな場所が北広島だったんです。今後黒松内町でも同じような施設を展開する予定で、2028年ころまでに道内6か所で広げていきたいと思っています。本当にいまからワクワクしています」と話してくれました。
「これだけ会社と成長できたのは本当に社員やかかわってくれる皆さんのおかげだとつくづく感じます。社員の理解と”やってみましょう”の精神がなければここまではできていません。私自身、本気で北海道が好きだしポテンシャルと言われ続けてほしくないので、もっともっと北海道の魅力を食を通じて伝えれるようにチャレンジしていきたいと思っています」
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